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お知らせ

2020年4月23日
日本臨床腫瘍学会作成
がん診療と新型コロナウイルス感染症:医療従事者向けQ&A

※2020年5月20日更新

項目をクリックするとQ&Aが表示されます。


1)がん診療はどう変わるべきか?

WHOと中国のコロナウイルスに関する合同ミッションのレポート(2020年2月28日)によると、COVID-19に罹患したがん患者の致死率は7.6%であった。全体の致死率は3.8%、併存疾患なし1.4%、心血管疾患13.2%、糖尿病9.2%、高血圧8.4%、慢性呼吸器疾患8.0%であった。 最近、中国から発表された論文では、1571例のCOVID-19患者を前向きに追跡したところ、がんの病歴を有した18例では、他の患者(非担がん患者)と比べて重症の発生率が高いことが報告された(1)。重症とは、集中治療室に入院し人工呼吸器を付けたか死亡した患者です。しかし、この報告からがん患者ではCOVID-19感染率が確実に増加するとは言えません。また、Xia らにはこれらの18例の患者は均一なグループとは言えず、がん患者全体を代表するものではないと報告した(2)。 特定の臓器(乳房、肺など)や治療法(免疫療法、チロシンキナーゼ阻害剤など)、またはサブポピュレーション(子供、高齢者など)のがん患者に関するエビデンスは確認されていない。

  • 1) Liang W, Guan W, Chen R, et al. Cancer patients in SARS-CoV-2 infection: a nationwide analysis in China. Lancet Oncol 2020; published online Feb 14. http://dx.doi.org/10.1016/ S1470-2045(20)30096-6.
  • 2) Xia Y, Jin R, Zhao J, et al. Risk of COVID-19 for patients with cancer. Lancet Oncol. 2020 Apr;21(4):e180. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30150-9. Epub 2020 Mar 3. PubMed.

2)一般的ながん診療において行うべきことは何か?

基本的に、通常のがんの診断及び治療に関するガイドラインを遵守することを推奨する。
患者にはCOVID-19の症状を周知し、適切な手洗い、衛生、および人混みや感染者への曝露を最小限に抑えることを徹底する。患者と医師はマスクを装着し、手指衛生を徹底する。発熱やその他の感染症の症状があるがん患者では、通常の診療と同様に、包括的な評価を行う必要がある。

3)COVID-19の検査方法にはどんな情報があるか?

PCR検査以外にも、以下のような抗体検査が開発されており、その一部は市販されている。
① COVID-19 IgM, IgG抗体検出キット イノビータ 陽性率 87.3%, 特異性100% (中国製)
② 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の抗体迅速検査 (Kurabo、日本製)
③ COVID-19 IgM, IgG抗体検出キットCellex社米国(FDAが4月初旬に承認)
ただし、IgM抗体が陽性になるまでに時間がかかるのが問題点と指摘されている。

4)手術は中止・延期可能か?延期の場合は術前治療をするべきか?

外科手術に関しては、疾患毎のリスクに応じて施行することを考慮する。がん腫によっては術前化学療法を考慮する。詳細は各がん腫の項目を参照。

  • 頭頚部がん:手術の際にエアロゾルを発散する可能性が高いので、感染の危険性に細心の注意を払う
  • 上部消化管腫瘍:根治性のあるものは手術を行う。
  • 下部消化管腫瘍:限局性病変の場合は術前化学療法も検討する。
  • 乳がん:非浸潤性乳管がん(DCIS)では生検施行し、ホルモン陽性ならホルモン療法も検討し、手術時期の延期の検討は可能。また、進行病期に応じて術前ホルモン療法や術前化学療法への変更は可能である。
  • 肉腫:組織型やリスクにより手術延期の検討は可能である。

5)放射線治療の開始は延期できるか?治療中は中断できるか?

  • 根治性のある放射線治療は行われるべきである。また、脊髄圧迫や上大静脈症候群、気道閉塞などのoncology emergencyでは治療を検討する。
  • 既に照射開始した場合は、照射を継続する。止むを得ず中断した場合に、とくに1週間以上中断した場合には、照射線量の見直しが必要である。
  • 骨転移の痛みなどに対する治療では照射回数を減らすことができる。

6)化学療法の中止・延期・中断をできるか?(同種幹細胞移植以外)

  • 寛解状態にある患者では、状況に応じて維持療法の中断も検討する
  • 再発リスクの低い術後化学療法の場合、治療の延期や再考、免疫抑制の少ない治療への変更を考慮する
  • 内服薬への変更を考慮する
  • 投与間隔が長めのレジメンに変更することを考慮する
  • G-CSF製剤や予防的な抗生剤投与も考慮
  • G-CSFや予防抗生剤を検討

7)幹細胞移植は延期できるか?

  • 従来型の治療により寛解の得られている症例では、予定されていた同種造血幹細胞移植を延期することは可能である。ただし、幹細胞移植とCOVID-19感染の影響に関するエビデンスは存在しない。これらのデータが集積するまでは、各学会のガイドラインを参照にする。
  • 英国国立医療技術評価機構(NICE)は、COVID-19流行下における幹細胞移植について緊急ガイダンスを発表している。 https://www.nice.org.uk/guidance/ng162 外部サイトへ移動

8)免疫チェックポイント阻害薬:延期・中断できるか?

免疫チェックポイント阻害薬は、重篤な免疫関連有害事象(ir-AE)を起こすことが報告されているため、COVID-19流行下では患者ごとに有用性と副作用の両者を考えて治療を行う。特に、免疫チェックポイント阻害薬は間質性肺炎を起こす可能性があるので、COVID-19を発症した場合には重篤化する可能性がある。

9)予防的抗ウィルス薬を使用すべきか?

COVID-19に対する抗ウイルス薬の予防的投与の有効性を調べたデータは無い。COVID-19患者を対象に、種々の抗ウイルス薬(アビガン、クロロキン、レムデシビル、ロピナビル、オセルタミビルリン酸塩[タミフル®など]の臨床試験は実施されているが、がん患者を対象とした臨床試験は行われていない。
COVID-19感染症の治療薬としては、2020年5月7日にレムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)が重症例に限定して特例承認された。対象はSpO2 94%以下、酸素吸入を要する、ECMO、侵襲的人工呼吸器管理のいずれかに該当する症例。

10)他に延期・中断・中止すべき治療は?

Angiotensin-converting enzyme (ACE) 阻害薬、Angiotensin II receptor阻害薬 (ARB)などのレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬(RAAS阻害薬)は、ACE2発現を介してCOVID-19発症リスクを高めること、あるいは逆に、間質性肺炎の重症度を低減することが報告されている。しかし、いずれもヒトではエビデンスが無く、米国心臓学会は、ACE阻害剤やARB投与中の症例では、治療の継続を推奨している。

11)スクリーニング検査は変更するべきか?

COVID-19流行下では、医療資源の節約や患者の来院回数を減らすという観点から、がんのスクリーニング検査は当分延期することが推奨される。

12)病期診断は変更すべきところがあるか?

新たにがんと診断された患者では、治療計画の策定にもっとも重要な検査を実施し、患者に治療計画(方針)を説明する。

13)Surveillanceは変更すべきところがあるか?

患者へのリスク無しに延期できる場合は延期する必要がある。また、検査が3〜6か月ごとなどの頻度が推奨されている場合には、最長(6ヶ月)まで遅らせる。

14)発熱性好中球減少症の対処方法

① 予防: 好中球減少性発熱のリスクと緊急事態の発現を最小限に抑えるために、好中球減少のある患者に対し、低リスク(例:10%以上のリスク)のレジメンにおいてもG-CSF製剤の投与は考慮される。その際には、好中球数のモニタリングと患者の定期的観察が望ましい。
② 急性期ケア: 発熱があり好中球減少が考えられる場合でも、電話で臨床的に安定していると判断された患者に対しては、経験的な有効な抗生物質を処方することは妥当性がある。

15)がん性貧血:ケアに影響はあるか?

通常の診療通り、症候性のがん/治療に関連した貧血が発生した場合、輸血を行う必要がある。アメリカ血液学会(ASH)のガイダンスを参照:https://www.choosingwisely.org/clinician-lists/american-society-hematolo . 外部サイトへ移動 
ASHのガイダンスでは、貧血の症状を緩和したり、患者を安全なヘモグロビンの範囲(心臓疾患のない場合、7〜8 g / dL)に戻すために必要な赤血球最小数より多く輸血しないことを推奨する。輸血を検討するときは、特定の患者の状況(高齢者、うっ血性心疾患など)を考慮に入れる必要がある。特に、酸素運搬能力が低下している人工呼吸サポートを受けている患者では、ヘモグロビン閾値が高い。

16)中心静脈カテーテル・ポート:どのように維持されるべきか?フラッシュする間隔は?

ポートのフラッシュは12週間ごとで、有害事象やポート閉塞などの明らかな増加はなかったというエビデンスがある。 患者が自分のポートフラッシュできる場合はそれを考慮する。ただし、トレーニングのプロセス自体が曝露の原因となる可能性があり、また自宅で無菌用品を入手できない可能性がある。


1) 医療スタッフに対する対応

  • 新型コロナウィルス感染時の症状、およびスクリーニングの手順、標準予防策、個人用保護具(ガウン、手袋、マスク、キャップ、 エプロン、シューカバー、フェイスシールド、ゴーグルなど)の使用方法の再教育を行う。
  • 普段、個人用保護具を使用しないスタッフにも、臨時の対応を想定して準備をする。
  • 現在の検査ガイドラインに従い、新型コロナウィルスの検査のための検体採取方法のトレーニングを行う。

2) 病院としての対応

  • 病院への入り口を制限すること (可能であれば1箇所に)。
  • 病院への訪問(入院患者への面会や医療関連メーカーの訪問など)を原則禁止する、または必要最小限にする。
  • 病院、クリニック、またはオフィスの外に患者をトリアージするための場所を設置し、社会的距離を2 m以上に保ち、患者と訪問者が入室する前に新型コロナウィルスの症状と発熱をチェックする。
  • 病院の外でスクリーニングを行わない場合は、受付にバリアを置くするか少なくとも1.8 m以上の距離を保つ。
  • 待機エリアを設置して、人と人との距離を少なくとも2 m以上離れるようにする。
  • 外来化学療法室は、患者間の距離を少なくとも2 m以上確保し、セミ個室スペースを作成する。患者間にカーテンをしてバリアを作るのも良い。
  • 全ての直接顔を合わせるミーティングや患者活動を延期あるいはウェブミーティングに変更する。

3) 患者の定期受診について

  • 積極的ながん治療を受けていない患者では定期フォローを延期する (半年や1年毎など)。
  • 定期的なフォローアップの代わりに、簡単な電話確認などを行う。現在維持療法を受けている患者では、十分な薬剤が手持ちにあることを確認し、手持ちから少なくなった場合の対応を知らせる。
  • COVID-19感染の蔓延が長引くにつれ、がんサバイバーの電話診療などの感染予防策が重要である。各病院における電話診療の方法、処方箋の渡し方、会計方法等を確認する。
  • 患者が施設に来る代わりに、かかりつけ医で採血検査ができれば考慮する。その場合、採血検査の結果の評価はかかりつけ医と連携して患者に伝える。
  • 感染者の少ない地域においても、緊急性の無い受診を延期し、より緊急性のある受診のためにあてるべきである。

4) 感染予防・コントロール

がん専門施設においては施設への入り口を1か所にして、施設外からの全ての患者、訪問者についてCOVID-19の症状と発熱の有無をスクリーニングすることが推奨される。その他に以下のことを推奨する。

  • 受診日に、呼吸器感染症(咳、喉の痛み、発熱など)の症状が出た場合は、受診の前に電話をしてもらい、予定を立て直す。
  • 予約前日に患者に連絡し、咳、喉の痛み、発熱、その他のインフルエンザ様症状が無いかを確認し、症状がある場合は予約を変更する。
  • 医療関連企業の必要不可欠な訪問は許可するが、1名に制限する。その場合でも、共同治療エリアへの入場は拒否し、訪問者には車両内での待機や治療後に訪問するように依頼する。訪問者が感染症の症状を示している場合は入室を拒否する。
  • 病院を訪問する全ての患者や企業関係者のスクリーニングを行う。
  • 患者や訪問者のスクリーニングを行うスタッフには、個人用保護具(マスクを含む)、ゴミ箱、洗浄剤/消毒剤を提供する。
  • 患者と訪問者には、過去14日間の国外滞在歴、咳、喉の痛み、発熱の症状、呼吸器症状の有無、COVID-19が判明している人への曝露について質問する。可能な場合は、体温測定を行う。
  • 患者と訪問者用に、COVID-19のスクリーニングに用いる質問表や、症状をリストした分かりやすい看板、感染防止のための適切なイラストなどを掲示する。
  • 感染が疑われる患者には、サージカルマスクを提供して迅速に隔離し、より完全なスクリーニングまたは検査を実施する。 隔離は、診察室またはドアを閉めた他のプライベートエリアで行う。
  • COVID-19が判明している、または疑われる患者の部屋に入る全てのスタッフは、標準予防策を遵守し、N95マスクまたはサージカルマスク、ガウン、手袋、および眼の保護具を使用する。
  • 呼吸器症状を呈する患者のための行動計画を確立する(例:検査のための機器の確保、プライマリケアまたは地域保健所との調整)。

5) COVID-19患者と接触した医療従事者の就業停止期間について。

  • 医療従事者のリスク評価は患者との接触時間の長さ、個人用保護具を使用していたか、患者がサージカルマスクを着用していたかどうかに基づいている。
    米国疾病予防管理センター (CDC)の医療従事者の就業停止基準を示す。

※Translated with permission for contents 1 and 2 from the website of © 2020 American Society of Clinical Oncology (ASCO). All rights reserved.
1, 2の内容はASCOより了承を得て、ASCOのホームページ掲載内容を和訳しました。
※The authors, editors, and ASCO are not responsible for errors or omissions in translations.
和訳の誤りはASCOの責任ではありません。


1)がん治療の継続を確保する

重要ながん治療は継続する必要があるが、同時に患者をCOVID-19の感染から守るためにあらゆる手段を講じる必要がある。COVID-19への感染リスクは患者ごとに異なるため、がん治療の必要性とのバランスも鑑み、個別にリスク評価を行う必要がある。
あるがん診療科では、活動性のがん患者に対し、その緊急性に応じてがん治療を最優先したり、フォローアップまでの期間を延期している。ただし、多くの患者では、十分に計画され、適切にコントロールされたがん治療を受けることによる恩恵の方が、COVID-19感染のリスクを上回ると思われる。

2)ルーチンを見直す

COVID-19流行下における医療資源の再配分と安全対策は、これまでのがん治療のルーチンに影響を与える。流行時における緊急のがん治療計画は、施設管理者とも密に連絡を取り合い、迅速に評価する必要がある。
全身状態の安定している患者、特に経口薬治療を受けている患者に対する電話診療の活用や、受診回数を減らすためのレジメンスケジュールの再評価(毎週投与を2週もしくは3週毎の投与や、投与経路を静脈から経口もしくは皮下に変更)などが推奨される。診察前日に電話でがん患者に風邪様症状や発熱の有無を確認することも有用である。

3)患者を守るために自分自身を守る

医療従事者は現在、病原体への曝露や長時間労働、精神的苦痛などによりCOVID-19に感染する危険にさらされている。
感染防御の適切なトレーニングは、すべての医療従事者の安全の確保に重要であり、がん患者への安全な治療環境の提供に不可欠である。
医療現場では個人用防護具の着用を推奨する。がんの医療従事者をチームに分けて、コロナウイルスの潜伏期間である14日毎のシフトで交代させる戦略は、医療従事者の安全と健康を維持するのに役立つ可能性がある。 私生活において医療従事者はWHOが推奨するCOVID-19対する基本的な感染予防対策に従うことが推奨される(例:頻回の手洗い、社会的距離の保持)。

4)患者サポートの強化

COVID-19流行下では、がん患者に高度の不安、恐怖、精神的苦痛を与える可能性がある。感染予防のためにできることや、レジメンスケジュールの変更、診療のキャンセルまたは延期について十分話し合うことは、患者の健康を維持する上で重要である。
電話診療やWeb診療の実施も必要性がある。


2020年5月7日にベクルリー(一般名 レムデシビル)が重症例に限定して特例承認された。また、アビガン(一般名 ファビピラビル)も2020年5月中に承認される見込みである。
また、以下の様なCOVID-19に対する臨床治験が我が国で行われている。

  • ① 「重症患者等に係る臨床学的治療法の開発」(国立国際医療センター大曲国際感染症センター長)
    (対象治療薬:アビガン(一般名 ファビピラビル)、カレトラ(一般名ロピナビル,リトナビル)、オルベスコ(一般名 シクレソニド)
    http://www.ncgm.go.jp/covid19/20200317112410.html 外部サイトへ移動 
  • ② 「SARS-CoV2 感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を 目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」(藤田医科大学病院 湯澤病院長)
    (対象治療薬:アビガン(一般名 ファビピラビル)、オルベスコ(一般名 シクレソニド)、フサン(一般名 ナファモスタット)、フオイパン(一般名 カモスタット)
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs041190120 外部サイトへ移動 
  • ③ 「新型コロナウイルス感染症におけるロピナビル、リトナビル、ヒドロキシクロロキン硫酸塩製剤3剤併用の有効性、安全性を評価する多施設共同非盲検前向き単群試験」(群馬大学医学部附属病院 徳江 豊)
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031190227 外部サイトへ移動 
  • ④ 「肺炎を有する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を対象としたファビピラビルとナファモスタットメシル酸塩の併用療法の有効性及び安全性を検討する多施設共同単盲検ランダム化比較試験」(東京大学医学部附属病院 森屋 恭爾)
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031200026 外部サイトへ移動 
  • ⑤ 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状・軽症患者に対するシクレソニド吸入剤の有効性及び安全性を検討する多施設共同非盲検ランダム化比較試験」(国立国際医療研究センター病院  杉山 温人)
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031190269 外部サイトへ移動 
  • ⑥ 「新型コロナウイルス感染症におけるファビピラビル錠の有効性、安全性を評価する多施設共同非盲検前向き単群試験」(群馬大学医学部付属病院 徳江 豊)
    https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs031190226 外部サイトへ移動 

※Translated with permission for contents 3 from the website of 2020 European Society of Medical Oncology (ESMO).
以上の内容は、ESMOの了承を得て翻訳しています。


(世界肺癌学会議 IASLCの指針を参考に作成)

1) どのようにがんの診療をすべきか?

  • 通常の時と同様に、病理診断、病期診断、および点滴治療が必要な患者さんは入院あるいは外来で診療を行う。現在治療している患者さんは、そのまま継続を試みるが、長期経過観察中やがんサバイバーの方の診察は延期を考慮される。
  • 抗がん薬の点滴による治療は継続する。点滴の投与スケジュールを変更(毎週投与から3週毎への投与、3週毎の投与から4~5週毎への投与)し、外来受診の回数を減らすことも考慮する。病勢が安定していれば、1サイクル分の休薬期間を設けることも考慮する。TKI治療中の患者では、COVID-19暴露を予防するために、画像評価を少し延期することも可能である。血液検査は、近医にて施行することを考慮する。

2) 肺がん疑いの患者への検査は?

  • 前もって電話で、あるいは診察室に入る前にCOVID-19に関する症状スクリーニングを行う。
  • CTガイド下針生検が困難になる重大な合併症がなければ、CTガイド下針生検で病理診断を行う(日本ではまず気管支鏡を行うことが多いが、COVID-19流行地域では気管支鏡の施行自体が医療者の曝露リスクが高い)。
  • 気管支鏡やEBUSは、マスクと透明なプラスチック・シールドなどの個人防護具(PPE)を用いて行う。症例により異なるが、緊急性のない検査なら2~4週の延期は可能である(特に病院内にCOVID-19患者が急増しているとき)。

3) 肺がんの疑われる、高齢者や基礎疾患のある患者への生検は?

  • 肺がんが疑われた場合には、COVID-19流行前と同様に、病理診断や病期診断の検査を行う。
  • 経胸壁(CTガイド下あるいはエコー下)針生検による確定診断が望ましい。
  • 症例により異なるが、気管支鏡検査は2~4週の延期を考慮できる。

4) 新しく診断されたがん患者に対する手術は?

  • 術前治療がすでに終了している場合、あるいは新しく診断されたsolid-typeの結節影の場合は、遅延無く手術が行われるべきである。
  • 肺がん部位のsolid componentの程度、PETでのSUV値、solid部分の大きさ、あるいは肺野条件でのすりガラス部分の縦隔条件での消失割合など総合的な判断に基づき手術延期が可能か否かを決定するが、極めて難しい判断となる。
  • 低リスクの早期がん病変、CT画像で微少浸潤腺がん、50%未満のsolid component、3 cm以下の原発巣など比較的早期のがんでは、4週間の手術延期は可能と考える。腫瘍量が大きい場合(例えば4 cm以上、N1陽性、明らかなN2陽性)には、腫瘍内科医は術前の化学療法や化学放射線療法を推奨する。

5) 高齢や基礎疾患を有する患者に対する手術は?

  • 体幹部定位放射線治療(SBRT)などの有効な局所療法が可能な施設が近くにあればそこでの治療が適切であると思われるが、遠距離を移動することは避けたほうが良い。
  • 高齢者や基礎疾患を有する患者であっても、外科手術の対象となるか否かはCOVID-19流行前と同じ基準で判断するのが望ましい。
  • 高齢者や基礎疾患を有する患者の手術適応の判断が難しい場合は、SBRTの可能施設か腫瘍内科へ紹介する。

6)術後化学療法は?

  • 術後再発リスクの高い患者(T3/4 or N2)で、65歳未満で全身状態が良ければ、化学療法が行われるべきである。
  • 再発リスクが中等度の患者(T2b-T3N0 or N1)では、個々の症例のリスクとベネフィット (年齢、基礎疾患の有無、全身状態、副作用など)を考慮するが、治療することが望ましい。
  • 再発リスクが低い患者(T1A-T2bN0)では、個々の症例における化学療法のリスクとベネフィットを考え、治療のメリットが低ければ治療の延期を考慮する。
  • 術後6~12週後の化学療法開始も許容される。
  • 高齢者(年齢≥70歳)や基礎疾患のある患者では、中止も考慮する。
  • 発熱性好中球減少症のリスクが10-15%<のレジメンでは、G-CSF投与を考慮する。
  • 術前・術後療法の適応は、COVID-19流行前と同じ基準で行う。
  • 切除可能なcStage III症例では、術前化学療法を行うべきである。

7)化学放射線療法は続ける?どうして?

  • 限局型小細胞癌、切除不能非小細胞肺癌 (stage III)では同時化学放射線療法を行うべきである。
  • 化学放射線療法は、通常がんの根治を目指して行っているので、既に治療が開始されている場合には完遂するべきである。
  • 切除不能非小細胞肺癌 (stage II)の治療オプションとして、化学放射線療法を考慮することができる。
  • 上大静脈症候群、喀血、脊髄圧迫、骨転移による疼痛、他の生命を脅かすようなOncology emergencyに対して放射線照射を行うべきである。

8)新規化学療法の導入は?

新しく診断された患者には、通常化学療法が行われるべきである。患者がCOVID-19に罹患している場合は、肺炎の状態を考慮して治療を少し遅らせるべきかどうかを慎重に判断する。

9)化学療法は続けるべき?

  • 一般に、切除不能肺癌に対する化学療法は続けるべきである。
  • 治療プロトコールを2週間に1回から3週間に1回のものに変更する、可能であれば点滴治療から内服薬に変更する、など受診回数を減らすことが考慮される。
  • 適切な用量調整にもかかわらず発熱性好中球減少症のリスクが10%<の場合には、G-CSFの一次的予防投与を考慮する。
  • 採血検査を近医で行うことも考慮する。
  • 化学放射線療法後の限局型小細胞肺癌に対する予防的全脳照射(PCI)は行うべきである。

10) 維持療法は続けるべき?

  • 続けることが望ましい。
  • 3から4週の休薬期間または治療と治療の間隔を延長することは考慮しても良い。

11) 新規治療は導入すべき?

新しく診断された転移のあるがん患者に対して治療の種類に関わらず標準的治療を提供し、疾患を制御し、生活の質を維持し、より良いPSを維持または達成すべきである。

12) 分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害薬の治療は?

  • 分子標的治療は行うべきである。経過観察の期間は個人の状況により6週から12週程度まで延長しても良い。
  • 抗PD- (L) 1抗体薬の投与では、例えば2-3週サイクルから4-6週サイクルの治療に変更または遅らせることを考慮する。
  • 局所進行非小細胞肺癌の放射線化学療法後の地固め療法としてDurvalumabの適応がある場合は、行うべきである。
  • 抗PD-(L)1抗体薬を12あるいは18ヶ月以上投与している症例では、次サイクルを遅らせる、サ イクル数を減らす、あるいは全体に治療間隔を長くすることを考慮しても良い。

※Content 4 was written referring to the guideline of The International Association for the Study of Lung Cancer (IASLC) with permission of IALC.
以上の内容は世界肺癌学会議の了承を得て、IALCの指針を参考に記載しました。

※各がん腫に対する治療方針の詳細はESMOの診療指針を参照 (ESMOの了解取得済み):
https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic 外部サイトへ移動

作成:

高山 哲治(委員長)
金井 雅史(副委員長)
岩朝 勤
加藤 俊介
佐藤 康史
下田 和哉
下平 秀樹
白杉 由香理
高田 弘一
高張 大亮
瀧川 奈義夫
福田 実