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がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A 

2020年4月20日


1)新型コロナウイルス(COVID-19)とはどんな病気ですか?

COVID-19 (新型コロナウィルス感染症2019)は中国湖北省武漢市で初めて報告され、その後、中国国内からアジア、ヨーロッパ、アメリカに拡散し、現在世界的大流行(パンデミック)を引き起こしています。COVID-19はSARS-CoV-2ウィルスにより発症する感染症です。

2)新型コロナウイルスはどのように感染拡大しますか?

このウィルスはもともと動物に感染していましたが、動物から人に感染し、現在は人から人に拡散していると考えられます。現時点では、詳しい感染性は分かりませんが、高い感染力を有すると考えられます。感染者の咳やくしゃみなどの飛沫が、近くにいる人の眼、鼻、口に到達して感染する飛沫感染と、ドアノブやパソコンのキーボードなどからの接触感染の2つのルートがあります。

3)新型コロナウイルスを検出するPCR検査とはどんな検査ですか?

検体は鼻腔、口腔背面や肺の深部などウィルスが存在する可能性の高い部位から採取します。検体からウィルス粒子の中のRNAを抽出し、相補するDNAに変換します。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により相補DNA上のウィルスのみに認められる配列を繰り返し増幅します。DNAの増幅が起きたときに蛍光反応が生じ、その蛍光強度が強ければ陽性と判断します。もし、ウィルス由来の配列が無く、増幅しなければ陰性になります。

4)他に新型コロナウイルスの検査方法はありますか?

血液を採取して、新型コロナウイルスに対する抗体を調べるキット(抗体検査)が米国、中国、日本などから販売され始めました。15〜30分で判定できるとされていますが、感度などの詳細はまだわかりません。ただし、感染してから、陽性になるまでに数日以上かかるというデータもあり、実用化するかどうかはまだ不明です。

5)新型コロナウイルスは無症状の人からも感染が伝播しますか(移りますか)?

はい。何の症状もない人から感染する可能性があるので、注意が必要です。

6)新型コロナウイルスに感染するとどんな症状が出ますか?発症までの期間はどれくらいですか?

症状は、咳、息切れ、筋肉痛、発熱、嗅覚異常(匂いがしない)、味覚異常などです。
発症までの期間は、2週間以内とされています。

7)新型コロナウイルス感染症の重症化のリスクを教えてください

60歳以上で病気をもっている方(心臓病、糖尿病、肺疾患、がん、透析患者)、免疫障害のある方です。

8)一般的に、免疫障害とはなんですか?

ウイルスや細菌などから体を守る白血球の数が少ないか、その機能が低下している状態のことです。がん患者さんは免疫障害を有しています。

9)がん患者にとって新型コロナウイルス感染症のリスクは何ですか?

COVID-19に罹患したがん患者さんを対象とした最近の中国の研究では、過去1か月以内に化学療法または手術を受けた患者さんでは、感染した場合の重症化リスクが高いことが報告されています。現在がん治療を受けている患者さんは、寛解している患者よりもおそらくリスクが高いと思われます。幹細胞移植またはCAR-T細胞療法を受けて1年以内の方は,COVID-19に感染すると、合併症を発症するリスクが高い可能性があります。また、これらの治療後1年以上経過した方でも、免疫障害がある方は高リスクです。

10)新型コロナウイルスは固形物の表面上でどれだけ生きていますか?

まだにはっきり分かっていませんが、プラスチックまたは段ボールで最大3日間生存できることが報告されています。新型コロナウイルは接触感染が多いと言われているので、外出後には手洗いをすることが重要です。

11)新型コロナウイルス感染症に対するリスクが高い人はどうするべきですか?

  • すべての内服薬や外用薬を30日分確保し,これらの薬がなくなる1週間前に処方してもらう準備をして下さい。
  • 他人との距離を2m以上空けて予防して下さい。
  • 公共の場所に出かけたときは、他人に近づかないで下さい。
  • 他人との距離を2m以上あけ、石鹸と水で少なくとも20秒間頻繁に手を洗って下さい。
  • 石鹸で手洗いをできない場合、60%以上のアルコールを用いて手指を消毒してください。
  • 人ごみを避けて、不必要な旅行を避けて下さい。
  • できるだけ家にいて下さい。咳、息切れ、筋肉痛、発熱、匂いの異常(嗅覚異常)、味覚異常などの症状に注意してください。
  • 上記の症状が出現した場合は、家にいて主治医に連絡して下さい。

12)新型コロナウイルス感染者との濃厚接触者とはどんな人ですか?

「患者(確定例)」と手で触れる、又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル以内)に、防護具の着用などの感染予防策を実施することなく長期間存在した者。「患者(確定例)」が発病した日以降に患者と接触した者のうち、以下に該当するものが例としてあげられますが、状況を総合的に勘案して判断する必要があります。
 ①住居を共にする世帯内接触者
 ②同一室内にいた、などの、「患者」と接触があった者 (状況を総合的に判断する)
 ③「患者」の汚染物(痰など)に接触した者
 ④「患者」の診察、搬送等に携わった者

13)がん治療(薬物・手術・放射線)は延期するべきですか?

患者さん一人一人により状況が異なるため、主治医と相談して決定してください。

14)新型コロナウイルスの治療をしている病院でも安全にがん治療できますか?

病院では、基本的に患者さん、訪問者はもちろん、医療従事者への感染を防ぐような取り組みを行っています。詳細は現在治療をうけている病院へお問い合わせ下さい。

15)新型コロナウイルス感染を疑う症状が出たらどうしたら良いですか?

14日以内に新たに出現した、あるいは悪化した咳、息切れ、筋肉痛、発熱、匂いの異常、味覚異常などがある場合、家族あるいは地域の人への感染を減らすために、以下の手順をお守りください。

  • 主治医へ連絡
  • 病院受診時以外は外出せずに家に滞在する。通学、通勤や、公共の場所への外出は避けて下さい。
  • 家族やペットとの接触も可能な限り避ける。
  • 咳やくしゃみをするときは、口や鼻を覆う。
  • 咳がある場合は、家族を含め人前に出るときはマスクで鼻や口を覆う。
  • 顔を手で触ったあと、食事前、トイレのあとに手を洗う。石鹸がない場合は、アルコール濃度60%以上の消毒液で消毒する。
  • タオルなどの家庭内で個々に使用するものの共有を避ける。
  • テーブル、ドアノブ、電話、キーボードなどの、手で触る頻度が高い箇所は、毎日清掃する。取扱説明書に従い、消毒用スプレーやウエットティッシュ(シート)などを使用。

16)新型コロナウイルス感染症に対する治療法はあリますか?

新型コロナウイルスに直接効果がある治療法は現時点ではありません。発熱や筋肉痛に対する治療を行います。入院が必要となる症状が有る場合は、支持療法を行います。

17)新型コロナウイルス感染者または感染が疑われる人と車に同乗しても良いですか?

はい、可能です。ただし、他者が触った可能性がある箇所(ハンドル、ドアのハンドル、ギア、空調・オーディオなどのスイッチなど)を抗菌ウエットティッシュで拭いてください。


1) 新型コロナウイルス感染はどのように予防しますか?

  • マスクをつける
  • 手を洗う
  • 目鼻口を触らない
  • 公共でよく手に触れられるところを触らない・触るときはハンカチなどを使う
  • 握手しない
  • よく手に触れるところを消毒する
  • 人混みを避ける・とくに換気の悪いところ
  • 不要の旅行をしない。
  • 自分の町に蔓延していたら自宅待機する

2) 備蓄しておくべきものはありますか?

  • 多めに内服薬をもらえるか主治医に相談する
  • 熱が出たときなどの解熱剤があるかを確認する

3) 新型コロナウイルス感染を疑う症状が出たときのために何を準備しますか?

  • 治療を受けている病院または主治医に電話で連絡する
  • 家族にメール・電話をする
  • 自分の介護者が病気になったときに助けてくれる人を決めておく

2020年2月に新型コロナウイルス感染対策として厚生労働省から出された事務連絡に基づきます。実施している病院とまだ実施していない病院があります。以下の順に行います。
 ①かかりつけの病院に電話をし、新型コロナ対策として電話診療(オンライン診療)が可能かどうかを尋ねます。
 ②電話やインターネットを使用して診察を受けます。
 ③病院から普段利用している薬局へ処方箋データを送ってもらいます。
 ④薬剤師から服薬情報などを尋ねる連絡が来ます。
 ⑤薬局から薬が届きます。  
支払い方法は病院によって違います。


がんの病状と新型コロナ肺炎ウイルスの感染リスクの程度により考えますが、基本的には以下の通りです。担当医の先生とよく話し合ってください。

1)がんが疑われる場合にがん診断のための検査はどうしますか?

  • 前述の症状が無ければ、予定通り検査を受けてください。非常事態宣言の地域や感染リスクの高い地域では、2~4週検査の延期を考えることができます。

2)新たにがんと診断された患者さんでは、手術を受けたほうが良いですか?

  • 遅延無く、手術が行われるべきです。同様に、術前の化学療法が行われた患者さんも、遅延無く手術が行われるべきです。
  • 一般的に、早期がんや限局した小さいがんでは、4週間の手術の遅れは許容されると考えられます。逆に、腫瘍量が大きいがんでは、状況に応じて術前の化学療法を行ったり、化学放射線療法に切り換えることも考慮されます。

3)術後の化学療法は行うべきですか?

  • 手術結果において再発リスクが高い患者さん(ハイリスク症例)や中等度の患者さん、とくにハイリスク症例では化学療法が行われるべきであると考えられます。
  • 再発リスクが低い患者さんでは、感染リスクに応じて治療開始の延期も考慮されます。術後6〜12週後の治療開始も許容されます。
  • 術後の再発リスクの程度、術後化学療法のリスクとベネフィット、基礎疾患(持病)の有無、副作用、全身状態を考えて治療開始、延期、場合によっては中止も考慮します。

4)化学放射線療法は続けるべきでしょうか?

  • 化学療法と放射線療法を併用する化学放射線療法は、通常は根治を目指しているので、続けるべきです。

5)化学療法は続けるべきでしょうか?

  • がんの種類(臓器)にもよりますが、一般的には続けるべきであると考えられます。
  • 場合によっては、治療プロトコールを2週間に1回から3週間に1回のものに変更する、可能であれば点滴治療から内服薬に変更する、など受診回数を減らすことが考慮されます。
  • 化学療法のリスクとベネフィット、基礎疾患(持病)の有無、副作用、全身状態を考えて、継続するかどうかを担当医と相談してください。

6)維持療法は続けるべきでしょうか?

  • がんの種類(臓器)にもよりますが、一般的には続けることが考慮されます。
  • 病状が安定している場合には、治療の間隔あるいは休薬期間を少し長めにし、来院回数を減らすことを考慮されます。
  • エビデンスに乏しい長期の維持療法は、新型コロナウイルスの感染リスクに応じて休薬あるいは中止が考慮されます。
  • 化学療法のリスクとベネフィット、基礎疾患(持病)の有無、副作用、全身状態を考えて、継続するかどうかを担当医と相談してください。
作成:

高山 哲治(委員長)
金井 雅史(副委員長)
岩朝 勤
加藤 俊介
佐藤 康史
下田 和哉
下平 秀樹
白杉 由香理
高田 弘一
高張 大亮
瀧川 奈義夫
福田 実