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日本臨床腫瘍学会翻訳版

ESMO ”CANCER PATIENT MANAGEMENT DURING THE COVID-19 PANDEMIC”
日本臨床腫瘍学会翻訳版

2020年7月10日

※2020年8月20日更新

https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic 外部サイトへ移動
※この和約はEuropean Society for Medical Oncology(ESMO)の許可を得ています。

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日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMOのCANCER PATIENT MANAGEMENT DURING THE COVID-19 PANDEMICを和訳しました。
(https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic 外部サイトへ移動)
Publication date: April 2020. 出版日:2020年4月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

本稿は、がん診療のいろいろな医療行為に優先順位を付けて、COVID-19流行下のがん診療におけるネガティブ効果を和らげるためのガイドラインとして用いるべきものである。状況は刻々と変化しており、患者の権利、安全及び幸福を達成するために、患者治療においては実利的な対応が求められる。

特にリスクが高いのはどんな患者か?

 これまでに、がん患者にCOVID-19やSARS-CoV2無症候性感染の発生頻度が高いという系統的なエビデンスは無い。しかし、最近の中国からの限られたデータ、より最近のイタリアや米国からのデータによるとがん患者は高いリスクがあるように思われる。
 これまでのデータでは、年齢が高ければ高いほど、また慢性呼吸器疾患、心血管系疾患、糖尿病、活動性のがん、それ以外の一般的な重症の慢性疾患などを併存する患者に感染を起こしやすい。
 それゆえ、COVID-19流行下では、ある患者ではがん治療のベネフィット/リスク比が再考される必要がある。
 2つのがん患者のグループが同定される:(A)は「治療しない群」である。すなわち、治療が終了した患者、あるいはコントロールされている患者である。(B)は「治療する群」である(術前補助化学療法、補助化学療法、転移性がんに対する化学療法)。すなわち、「活動性の疾患」があり、外科手術、化学療法/放射線療法、分子標的薬治療、ホルモン療法、免疫療法(補助化学療法でも、転移性がんの化学療法のどちらも)が適応となり得る。(A)、(B)のいずれの患者も、健康教育を行うことが推奨される:a) 混雑した場所を避けること、b) 病院を受診したり、治療を受けるときには(マスクなどの)防護具を付けること、c) WHOが示している通り、正しく手を洗うこと、d) COVID-19症状のある友人や親族と接しないこと、あるいはCOVI-19の流行地に居住しないこと、e) 全ての人々とソーシャルディスタンスを保つこと:他人を守るために、あなた自身を守ること。
 がん治療を受けるB群の患者に対しては、流行地に住んでいてもいなくても、病院は根治的な治療を実施すための方法を確保し、あるいは、転移性がんの患者においても、可能であれば根治治療を目指す方法を確保するように努めるべきである。がん患者の外来受診回数は、患者ケアができる範囲内で、最も安全で可能な回数まで減らすべきである。病院から離れてモニタリングを受けることができる場合に、経口抗がん剤投与を受ける患者は、病院受診回数を減らすために、少なくとも3コースの薬剤を供給するべきである。これらの患者における血液検査は、自宅に近い地方の病院で受けることができる。われわれは電話診療を推奨する。また、全ての経過観察のための受診を延期する。肺がん患者、あるいは肺の手術を受けたことのある患者、併存疾患を有する高齢者では、より注意深い経過観察を行うべきである。院内感染を避けるために、集中的な検査を実施するべきである。COVID-19のあらゆる症状、緊急性、入院の必要性に対して厳しく安全にトリアージすることが必要である。がん診療の拠点病院にアクセスする過程において、感染の可能性のある患者を早期にスクリーニングして診断するチェックポイントエリアを作るべきである。チェックポイントエリアの医療スタッフは、トレイニングを受けて防護服を着用するべきである。COVID-19や他の新しい感染症のような隔離を必要とする伝染性疾患の診断基準に当てはまる者は、可及的速やかにWHOやCDCウェブサイトのガイドラインにのっとり個室の検査室に移すべきである。彼らは、検査を受けたのちCOVID-19専用病棟に移るべきである。

がん患者におけるリスクとは以下のような症例が含まれる:

  • 化学療法を受けている患者、または過去3ヶ月に受けた患者
  • 広範な放射線療法を受けている患者
  • 過去6ヶ月以内に骨髄移植や幹細胞移植を受けた患者、あるいは現在なお免疫抑制剤を服用している患者
  • 免疫システムを障害する血液あるいはリンパ系のある種の悪性腫瘍。仮にそれらの治療を必要としない疾患も含む(例えば、慢性白血病、リンパ腫、あるいは骨髄腫)

特にリスクが高いのは免疫系障害を伴う以下のようながん患者である:

  • 白血球減少
  • 低免疫グロブリン値
  • 長期間の免疫抑制剤投与 (ステロイド、抗生物質)

最近の新しい以下のような症状には特別な注意を払うべきである:

  • 発熱
  • 咳嗽
  • 咽頭痛
  • 呼吸困難
  • 筋肉痛
  • 疲労感
  • 無嗅覚
  • 味覚異常

このような状況下では、以下を推奨する:PCR検査とはどんな検査ですか?

  • まだ実施していなければ、検査により確定診断をする
  • SRAS-CoV-2のRT-PCR検査は外科手術、放射線治療、化学療法、免疫療法、もし可能であれば、理想的には各治療サイクル前に実施するべきである。
    • もしCOVID-19を疑う症状を呈する経過観察中のがん患者やがん治療歴のある患者もSRAS-CoV-2RT-PCR検査を受けるべきである。
    • 全ての患者において、血清学的抗体検査(もし可能であれば)を実施して過去のCOVID-19感染の既往を調べるべきである。
    • もし検査能力に限りがあれば、現在治療している患者、経過観察中の患者、治療既往者において疑わしい症状のある全ての患者にSRAS-CoV-2RT-PCR検査を実施することを提案する。
    • もし血清学的抗体検査に限りがあれば、外科手術、放射線治療、化学療法や免疫療法、あるいは活動的な抗がん剤治療を行うすべての患者に血清学的抗体検査を実施うることを提案する。
  • COVIS-19の重症度を臨床的、画像的、肺機能検査、及び血液検査により評価する
  • COVID-19専用の病棟への入院の必要性を評価する

治療法決定の推奨

  • 可能であれば対面ではなく、電話で他の領域の専門家や患者とも良くコミュニケーションをとって討論することが強く推奨される。
  • 治療開始または継続の決定は、SARS-CoV2陰性患者のみならず、症状の軽い陽性患者では十分にリスク/ベネフィットを説明した上で行う必要がある。
  • COVID-19流行下において、現在のがん治療のベネフィットとリスクをよく検討する:治療状況、疾患の予後、患者の併存疾患、患者の希望、COVI-19感染の可能性と危険性。
    • もし早期がんに局所療法を(外科手術、または放射線治療)を予定されている場合には、「経過観察する」(あるステージの前立腺がんのように)ことにより治療を延期する、または、年齢、並存疾患、外科手術の予後などに対する効果のコスト/ベネフィットを考えて優先度を考えて治療をこなう。
    • もし静脈内投与療法を行っている場合には、可能であれば一時的に経口薬に変更して疾患をコントロールする。
    • 補助化学療法については、再発の高リスク患者で治療による絶対的サバイバルベネフィットの高いと予想される患者を優先的に行う。
    • 同様に、緩和治療については、もし可能であれば 「治療休薬」、「Stop and Go」、維持療法、経口薬への変更を考慮する。
    • 来院回数を減らすような、他の治療オプションやレジメンを考慮する。
    • 経口薬にて治療中の患者では、電話診療やweb診療による処方を考慮する
    • もし必要であれば、副作用の評価、投与量の調整、支持療法についても電話診療やweb診療が望ましい。
    • 放射線治療医と相談して、短時間加速照射または少分割照射スケジュールを考慮する。ただし、患者に対して科学的に正しく、適切な治療である必要がある。
  • 発熱するがん患者
    • 通常の腫瘍外来で診療してはいけない
    • がん患者や腫瘍診療スタッフの多い新領域の外で初めの評価を行う
    • コロナウイルス感染の可能性を考えて評価する必要がある。
    • 安定している患者は、外来で経口抗生物質で治療するべきである。

がん診療における優先度

 COVID-19流行下におけるがん診療に対して、ESMOは3段階の優先順位をつけている。すなわち、1. 最も優先して行うべき 「高優先度」、2 中等度に優先して行うべき 「中優先度」、3 優先度の低い「低優先度」 に順位付けを行っている。これはthe criteria of the Cancer Care Ontario, Huntsman Cancer Institute及びESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale (ESMO-MCBS)の基準に従い定義され、介入に基づく優先順位付けと臨床的重要性に関する情報が組み込まれている。

高優先度: 患者の状態が致死的、臨床的に不安定、または介入(検査や治療)による利益の大きいと考えられる (たとえば、全生存期間[OS]を大幅に改善するおよび/または生活の質[QOL]を大幅に改善)。
中優先度: 患者は差し迫った状況には無いが、6週間以上介入(検査や治療)が遅れると、生存期間、予後、QOLに悪影響を与えるもの。
低優先度: COVID-19流行中であれば、患者の検査や治療を延期できる程度に十分安定しているもの、または、ベネフィットを考えると優先的とは言えない検査や治療(たとえば、生存率の向上やQOLの低下に寄与しないもの)。

執筆者

Matti Aapro1★, Alfredo Addeo2, Paolo Acierto3, Thomas Berg4★, Anna Berghoff5★, Ilaria Betella6★, Jean-Yves Blay7, Davide Giovanni Bosetti8, Hasna Bouchaab9, Juliane Brandt10, Christian Buske11, Augusto Caraceni12★, Fatima Cardoso13★, Joan Carles14★, Silvia Catanese15, Nathan Cherny16, Ilaria Colombo17★, Nicoletta Colombo17,18, Javier Cortes14,19★, Carmen Criscitiello20★, Giuseppe Curigliano20,21, Evandro de Azambuja22★, Suzette Delaloge23★, Maria Del Grande8★, Maria De Santis24★ Jean-Yves Douillard25★, Reinhard Dummer26, Rafal Dziadziuszko27★, Bernard Escudier23★, Karim Fizazi23★, Tania Fleitas28,29, Enrico Franceschi30★, Christoph Hoeller31★, Silke Gillessen16,32,33,34, Antonio Gonzalez Martin35★, Richard Gralla36★, Alexandru Grigorescu37★, Alessandro Gronchi38, Azza Hassan39★, David Hui40★, Mats Jerkeman41, Robin Jones42★, Karin Jordan10, Ulrich Keilholz43, Gudrun Kreye44★, Jonathan Ledermann45★, Sibylle Loibl46★, Florian Lordick47★, Paul Lorigan48★, Yohann Loriot23★, Javier Martin Broto49★, Ulrich Mey50, Olivier Michielin51, Masanori Mori52★, Francesco Multinu6★, Shani Paluch-Shimon53★, Chris Parker54★, Antonio Passaro55, George Pentheroudakis56★, Solange Peters9, Camillo Porta57,58★, Thomas Powles59, Matthias Preusser5, Martin Reck60★, Carla Ripamonti61★, Maryna Rubach62★, Tamari Rukhadze63★, Manuela Schmidinger5★, Elzbieta Senkus-Konefka64★, Cristiana Sessa8, Adir Shaulov65★, Silvia Stacchiotti66, Anna-Marie Stevens67★, Sebastian Stintzing68★, Dario Trapani20, Alexander van Akkooi69, Loredana Vecchione68,70, Florian van Bömmel4, Ursula Vogl8, Christophe Von Garnier71,72, Michael Weller73, Jayne Wood74★, Eleonora Zaccarelli6★, Camilla Zimmermann75,76★

acted as reviewer
1Cancer Center, Clinique de Genolier, Genolier, Vaud, Switzerland
2Department of Oncology, University Hospital of Geneva, Geneva, Switzerland
3Cancer Immunotherapy and Development Therapeutics Unit, Istituto Nazionale Tumori IRCCS Fondazione "G. Pascale", Naples, Italy
4Division of Hepatology, Department of Oncology, Gastroenterology, Hepatology, Pneumology and Infectiology, Leipzig University Medical Center, Germany
5Medizinische Universität Wien, Klinik für Innere Medizin I, Klinische Abteilung für Onkologie, Vienna, Austria
6Department of Gynecologic Oncology, IEO, European Institute of Oncology IRCCS, Milan, Italy
7Medical Oncology Department, Centre Léon Bérard, Lyon, France
8Oncology Institute of Southern Switzerland (IOSI), Bellinzona, Switzerland
9Department of Oncology, Centre Hospitalier Universitaire Vaudois, Lausanne University, Lausanne, Switzerland
10Hematology, Oncology and Rheumatology, University Hospital Heidelberg, Germany
12Department of Internal Medicine III, University Hospital Ulm, Ulm, Germany
12Palliative Care, National Cancer Institute, Milan, Italy
13Breast Unit, Champalimaud Clinical Center-Champalimaud Foundation, Lisbon, Portugal
14Vall d´Hebron Institute of Oncology (VHIO), Vall d'Hebron University Hospital, Barcelona, Spain
15Unit of Medical Oncology, Pisa University Hospital, Pisa, Italy
16Cancer Pain and Palliative Medicine Service, Department of Medical Oncology, Shaare Zedek Medical Center, Jerusalem, Israel
17Gynecology Program, European Institute of Oncology, 20141 Milan, Italy
18School of Medicine and Surgery, University Milan Bicocca, 20126 Milan, Italy
19Medical Oncology Department, IOB Institute of Oncology, Quirosalud Group, Madrid & Barcelona, Spain
20New Drugs and Early Drug Development for Innovative Therapies Division, IEO, European Institute of Oncology IRCCS, Milan, Italy
21Department of Oncology and Hematology, Universita degli Studi di Milano, Milan, Italy
22Department of Medical Oncology, Institut Jules Bordet and Université Libre de Bruxelles (ULB), Brussels, Belgium
23Department of Cancer Medicine, Gustave Roussy, Villejuif, France
24Department of Urology, Charité University Hospital, Berlin, Germany
25Chief Medical Officer, ESMO, Lugano, Switzerland
26Department of Dermatology, University and University Hospital Zurich, Zurich, Switzerland
27Department of Oncology and Radiology, Medical University of Gdańsk, Gdańsk, Poland
28Department of Medical Oncology, INCLIVA Biomedical Research Institute, University of Valencia, Valencia, Spain
29Instituto de Salud Carlos III, CIBERONC, Madrid, Spain
30Department of Medical Oncology, Azienda USL/IRCCS Institute of Neurological Sciences, Bologna, Italy
31Department of Dermatology, Medical University of Vienna, Austria
32Universita della Svizzera Italiana, Lugano, Switzerland; Cantonal Hospital, St. Gallen, Switzerland
33University of Bern, Bern, Switzerland
34Division of Cancer Science, University of Manchester, Manchester, UK
35Medical Oncology, Clinica Universidad de Navarra, Madrid, Madrid, Spain
36Department of Medical Oncology, Albert Einstein College of Medicine, Bronx, New York, USA
37Department of Medical Oncology, Institute of Oncology, Bucharest, Romania
38Department of Surgery, Fondazione IRCCS Istituto Nazionale dei Tumori, Milan, Italy
39Supportive & Palliative Care Section, Medical Oncology Department, National Center for Cancer Care and Research, Hamad Medical Corporation, Doha, Qatar
40Palliative, Rehabilitation and Integrative Medicine, The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, Texas, USA
41Department of Oncology, Skåne University Hospital, Lund University, Lund, Sweden
42Sarcoma Unit, Royal Marsden NHS Foundation Trust/Institute of Cancer Research, Chelsea, London, UK
43Charité Comprehensive Cancer Centre, Charité-Universitätsmedizin Berlin, Berlin, Germany
44Palliative Care Unit, Department of Internal Medicine II, University Hospital Krems, Karl Landsteiner University of Health Sciences, Krems an der Donau, Austria 45University College London Cancer Institute, and University College London Hospitals, London, UK
46German Breast Group, Neu-Isenburg, Germany
47University Cancer Center Leipzig, University Hospital Leipzig, Leipzig, Germany
48The Christie NHS Trust, Manchester, UK; The University of Manchester, Manchester, UK
49Medical Oncology Department, University Hospital Virgen del Rocio, Sevilla, Spain
50Department of Oncology and Haematology, Kantonsspital Graubünden, Chur, Switzerland
51Department of Oncology, Lausanne University Hospital, Lausanne, Switzerland
52Palliative Care Team, Division of Palliative and Supportive Care, Seirei Mikatahara General Hospital, Hamamatsu, Japan
53Department of Oncology, Shaare Zedek Medical Center, Jerusalem, Israel
54Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer Research, Sutton, UK
55Division of Thoracic Oncology, IEO, European Institute of Oncology IRCCS, Milan, Italy
56Department of Medical Oncology, University of Ioannina, Ioannina, Greece
57Department of Internal Medicine, University of Pavia, Italy
58Division of Translational Oncology, I.R.C.C.S. Istituti Clinici Scientifici Maugeri, Pavia, Italy
59Barts' Cancer institute, Queen Mary University of London, London, UK
60LungenClinic, Airway Research Center North, German Center for Lung Research, Grosshansdorf, Germany
61upportive Care Unit, Department Onco-Haematology, Fondazione IRCCS Istituto Nazionale Tumori, Milano, Italy
62Centrum Onkologii-Instytut im. Marii Sklodowskiej-Curie, Warsaw, Poland
63Faculty of Medicine, Iv, Javakhishvili Tbilisi State University, Tbilisi, Georgia
64Department of Oncology and Radiotherapy, Medical University of Gdańsk, Gdańsk, Poland
65Department of Hematology, Hadassah-Hebrew University Medical center, Jerusalem, Israel
66Cancer Medicine Department, Fondazione Istituto di Ricovero e Cura a Carattere Scientifico (IRCCS), Istituto Nazionale Tumori, Milan, Italy
67Nurse Consultant Symptom Control and Palliative Care, The Royal Marsden NHS Foundation Trust, London
68Department of Hematology, Oncology and Tumor Immunology, Charité Universitätsmedizin Berlin, Berlin, Germany
69Department of Surgical Oncology, Netherlands Cancer Institute - Antoni van Leeuwenhoek, Amsterdam, Netherlands
70Charitè Comprehensive Cancer Center, Berlin, Germany
71Department of BioMedical Research (DBMR), University of Bern, Bern, Switzerland
72Department of Pulmonary Medicine, University Hospital of Bern, Bern, Switzerland
73Department of Neurology, University Hospital and University of Zurich, Zurich, Switzerland
74Palliative Care, The Royal Marsden, London, UK
75Department of Supportive Care, Princess Margaret Cancer Centre, University Health Network, Toronto, Canada
76Divisions of Palliative Medicine and Medical Oncology, Department of Medicine, University of Toronto, Toronto, Canada


和訳:高山哲治
校正:後藤 悌
2020年5月29日(6月10日改訂)


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: BREAST CANCER
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Publication date: April 2020. 出版日:2020年4月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

がん診療における優先度
 COVID-19流行下におけるがん診療に対して、ESMOは3段階の優先順位をつけている。すなわち、1. 最も優先して行うべき 「高優先度」、2 中等度に優先して行うべき 「中優先度」、3 優先度の低い「低優先度」 に順位付けを行っている。これはthe criteria of the Cancer Care Ontario, Huntsman Cancer Institute及びESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale (ESMO-MCBS)の基準に従い定義され、介入に基づく優先順位付けと臨床的重要性に関する情報が組み込まれている。
高優先度: 患者の状態が致死的、臨床的に不安定、または介入(検査や治療)による利益の大きいと考えられる (たとえば、全生存期間[OS]を大幅に改善するおよび/または生活の質[QOL]を大幅に改善)。
中優先度: 患者は差し迫った状況には無いが、6週間以上介入(検査や治療)が遅れると、生存期間、予後、QOLに悪影響を与えるもの。
低優先度: COVID-19流行中であれば、患者の検査や治療を延期できる程度に十分安定しているもの、または、ベネフィットを考えると優先的とは言えない検査や治療(たとえば、生存率の向上やQOLの低下に寄与しないもの)。

乳がん患者における優先度

外来受診
高優先度

  • 術後の不安定な臨床状況(例えば血種や感染を併発しているような状況)
  • 妊娠中に乳がんと診断された場合

高/中優先度

  • 新規に浸潤性乳がんと診断(多職種キャンサーボードにて、生物学的特性や病期に基づいて優先度を討議し決定する)
  • 症状/有害事象、さらには病状の進行程度にかかわる重篤度にもよるが、症状や副作用が新たに生じた治療中の患者。可能な限り受診回数を減らし遠隔診療へ変更する。そのような症例に対しては経口投与可能な抗がん薬かホルモン治療と生物学的製剤の併用療法を行い、より安全を確保したうえで診療を継続する。

中優先度

  • 新規に診断された非浸潤性乳がん。可能な限り受診回数を減らし遠隔診療へ変更する。
  • 合併症のない術後患者

低優先度

  • 特別な問題がないことが確認されている症例。遠隔診療について相談する。
  • 経過観察中のがんサバイバー患者。遠隔診療について相談する。
  • 経過観察中の乳がん発症リスクの高いHBOC症例(BRCA保因者)や再発リスクの高い乳がん患者
  • 精神療法的支持が必要な症例の受診(遠隔診療へ変更する)

診断や画像検査
高優先度

  • 自己診断(触診)による乳房腫瘤や悪性を示唆するような症状
  • 外科的根治切除が可能と思われる局所再発の臨床所見がある症例(病期、病理組織学的所見や疾患の生物学的特性を加味して判断する)
  • マンモグラフィでの異常所見、もしくは乳がんに特異的な所見、さらには転移再発を示唆する症状をもとに病理組織検査(病理組織診もしくは細胞診)が必要な症例
  • 症状はなくともマンモグラフィBIRADS-5(カテゴリー5に相当)で、さらなる画像検査が必要な症例

高/中優先度

  • 新規に浸潤性乳がんと診断(多職種キャンサーボードにて、生物学的特性や病期に基づいて優先度を討議し決定する)
  • 症状/有害事象、さらには病状の進行程度にかかわる重篤度にもよるが、症状や副作用が新たに生じた治療中の患者。可能な限り受診回数を減らし遠隔診療へ変更する。そのような症例に対しては経口投与可能な抗がん薬かホルモン治療と生物学的製剤の併用療法を行い、より安全を確保したうえで診療を継続する。

中優先度

  • 症状はなくともマンモグラフィBIRADS-4 (カテゴリー4に相当)で、さらなる画像検査が必要な症例
  • 画像所見もしくは臨床的に生検が必要な転移再発が疑われる症例
  • 早期浸潤性乳がん症例であるが病期や生物学的特性に基づいて初期の全身検査が必要な症例
  • アンスラサイクリンもしくは抗HER2療法の導入が必要とされる早期浸潤性乳がん症例で心エコー検査が必要な症例

低優先度

  • 対策型マンモグラフィ検診(住民検診)と、リスクに応じた無症状者のMRIや超音波での乳がん検診
  • マンモグラフィーにて異常所見はあるものの6か月間の猶予があるカテゴリー3症例
  • 早期乳がんで症状がない場合であれば、経過観察の画像検査や、病期の再評価、ならびに心エコー、心電図、そして骨密度測定を延期することが可能と思われる
  • 転移乳がん症例では、症状に応じた診療が推奨される。画像所見や、全身精査による再評価、心エコーや心電図は延期し、間隔を伸ばして実施可能と思われる。遠隔診療を実施する

外科的治療
高優先度

  • 出血もしくは切開排膿が必要とされる膿瘍と血種を有する乳がん術後の合併症症例
  • 例えば虚血を伴う合併症があり再建を必要とする症
  • 術前化学療法を完遂した症例、または術前化学療法中のPD症例
  • 浸潤性乳がん症例のうち、多職種キャンサーボードで初回治療として手術を行うと決定された症例
  • 妊娠中の乳がん症例で手術が必要とされる症例(多職種による包括的治療は病期や生物学的特性に基づいて個別に行われるべきである)

高/中優先度

  • 再発悪性腫瘍の摘出(腫瘍のタイプと範囲による)

中優先度

  • 臨床的低リスクの原発性乳がん(例Stage I/IIでER陽性/PgR陽性/HER2陰性、低グレードまたは低増殖能の腫瘍)。多職種キャンサーボードを通して、閉経状態に応じて術前内分泌療法と手術の延期を検討する。
  • 悪性疑いで、確定診断がついていない生検

低優先度

  • 良性病変の摘出と乳管切除(線維腺腫、異型、乳頭腫)
  • 非浸潤癌に対する手術(広範囲な高グレードDCISは除く)
  • 良性疑いで、確定診断されていない生検
  • 自家組織やインプラントによる乳房再建
  • 無症状の高リスク患者に対する予防的手術

放射線療法
高優先度

  • 出血や疼痛に対する乳腺腫瘤の緩和照射(手術不能で薬物療法での症状緩和が困難な時)
  • 既に開始された治療
  • 急性の脊髄圧迫や症候性の脳転移などの緊急緩和照射
  • 高リスク乳がん患者に対する術後照射(炎症性乳がん、リンパ節転移陽性、TNBC、HER2陽性、術前化学療法後の腫瘍残存、40歳未満の若年)

中優先度

  • 低/中等度リスク乳がん患者に対する術後照射(65歳未満のStage I/II ルミナルタイプ、リンパ節転移や切除断端の状況によらずER陽性)。通院回数を減らすために、少分割照射法を検討する。待機期間中に内分泌療法を開始してもよい。

低優先度

  • 高齢低リスク乳がん患者(70歳以上で低リスクStage Iの ER陽性/HER2陰性乳がん)。放射線療法延期中に術後内分泌療法を開始する。
  • 上皮内がん

早期乳がん薬物療法
高優先度

  • TNBCに対する術前/術後化学療法
  • HER2陽性乳がんに対する術前/術後化学療法と抗HER2療法
  • 術前/術後内分泌療法±ガイドラインの推奨通りの高リスクER陽性HER2陰性乳がんに対する化学療法
  • 既に開始された術前化学療法の完遂(±抗HER2療法)
  • 高リスクTNBCに対する術後カペシタビン療法の継続
  • ベネフィットがリスクに勝ると考えられる場合、臨床試験で開始された治療の継続(パンデミックに際して規制当局や依頼者から指針が出される可能性もあり、安全に試験を遂行できる範囲内で、試験手順の変更も考慮する)

中優先度

  • 閉経後女性のStage I、低〜中等度グレード、小葉がんなどの乳がんでは、内分泌療法を先行させて手術の実施時期を遅らせることができる
  • 低遺伝子シグネチャー/スコアの患者の術後治療では、内分泌療法単独療法を優先する
  • 進行中の術後トラスツズマブ単剤療法は、COVID-19感染の高リスク患者では6〜8週間延期することができる

低優先度

  • 患者が無症状の場合、もしくは術前治療で効果が得られている場合には、フォローアップ画像、再ステージング検査、心エコー図、心電図、骨密度検査などの諸検査を遅らせることができる
 具体的な推奨事項
  • 閉経前および閉経後の標準的な術後内分泌療法の継続に関して:遠隔医療を使用して患者からの報告を通して毒性管理を行う
  • 術前内分泌療法はStage IまたはIIのER陽性/ HER2陰性乳がん患者において、手術を6~12か月ほど延期するための選択肢である
  • HER2陽性乳がんのうち、心血管疾患またはその他の併存症のある再発低リスクの高齢患者では、前向き無作為化試験のデータによると、術後抗HER2療法は12か月ではなく6か月間で中止可能であるとされる
  • 化学療法のスケジュールは、通院を減らすために変更してもよい(例えば、適切な場合には、特定の薬剤については毎週の投与ではなく3週毎の投与にするなど)。患者さんは好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF製剤の投与を受けるべきであるが、免疫抑制を軽減するためにデキサメタゾンの使用は必要に応じて制限すべきである
  • 患者の来院回数を減らすために、LHRHアナログを3ヶ月に1回の長期投与で投与するか、訪問看護師によるLHRHアナログの在宅投与を検討する
  • 可能であれば、家の近くで画像検査と血液検査を予定する
  • 可能なかぎり遠隔医療によるモニタリングを実施する

転移乳がん薬物療法
高優先度

  • 初回治療などの化学療法、内分泌療法、分子標的薬、または免疫チェックポイント阻害薬は、転移性疾患の転帰を改善する可能性が高い(HER2陽性乳がんに対するペルツズマブ/トラスツズマブと化学療法の併用療法は優先度が高い)。ER陽性/ HER2陰性乳がんに対するCDK 4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法やPD-L1陽性TNBCに対する化学療法とアテゾリズマブの併用療法など集学的治療を検討するキャンサーボードにおいて患者ごとに検討する
  • 重篤な内蔵転移
  • 患者の利益がリスクを上回り、患者の安全性と試験実施に影響を与えることなく手順を適応できる場合は臨床試験中の患者の試験治療を継続する。規制機関とスポンサーはパンデミック期に研究実施に関するルールに関するガイダンスを提供する場合がある

中優先度

  • 治療が臨床的な利益をもたらし転帰に影響を与える可能性がある場合の2次、3次、3次治療以降の治療
  • 特に併存症のある高齢患者では、内分泌療法とmTOR追加を回避または遅延することを検討する
  • 患者の利益がリスクを上回り、患者の安全と研究の実施に影響を与えることなく手順を適応できる可能性がある場合に限り、臨床試験への参加については患者毎に検討する

低優先度

  • 高カルシウム血症や疼痛コントロール目的以外で、他に通院の必要がない患者(経口化学療法や内分泌療法を受けている患者)への、骨修飾薬(ゾレドロン酸、デノスマブ)投与。骨修飾薬は3ヶ月ごとに投与可能
  • 臨床的に無症状であれば、画像検査、再検査、心エコー、心電図などのフォローアップ検査を遅らせたり、間隔を長くして行うことができる
 具体的な推奨事項
  • 化学療法が推奨される場合は、病院へのアクセスを減らすために経口剤が推奨される
  • 化学療法のスケジュールは、通院を減らすために変更してもよい(例えば、適切な場合には、特定の薬剤については毎週の投与ではなく3週毎の投与にするなど)。患者さんは好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF製剤の投与を受けるべきであるが、免疫抑制を軽減するためにデキサメタゾンの使用は必要に応じて制限すべきである
  • 患者の来院回数を減らすために、LHRHアナログを3ヶ月に1回の長期投与で投与するか、訪問看護師によるLHRHアナログの在宅投与を検討する
  • 内分泌療法:術後または転移乳がんで広く使用されている経口剤(例:タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤)は、免疫機能に影響を与えず、安全に継続することができる。フルベストラントは免疫機能に影響を与えることはないが、月1回の筋注が必要である
  • 可能な限り遠隔医療による安全性モニタリングを実施する
  • すべての患者には、遠隔医療による最良の在宅支持療法と症状コントロールの強化を安心して受ける必要がある
  • 骨転移患者に対する骨修飾薬は、最小限の来院で提供されるべきである
  • CDK4/6阻害剤の内分泌療法への導入は、その時点での推奨、地域の実情、医療資源に併せて行うべきである。好中球減少症に関連するリスクは明確でなく、研究の実施が求められている -速やかな治療の中止と、COVID-19診断機関への紹介のために、感染症症状の注意深い観察を行う
  • 特定の疾患パターン(例えば、骨転移のみ、低腫瘍量、de novo 遠隔転移)を有する患者に対して、CDK4/6 阻害剤をファーストラインに導入することを延期するという選択も、特に高齢者においては選択肢の一つとなり得る
  • 進行/転移TNBC患者に対しては、バイオマーカーに基づいて、その地域の標準治療と医療資源に応じて、第一選択治療法を定義することができる。PD-L1陽性のTNBC患者に対しては、免疫療法の適応を検討することができる。COVID-19の発症および進行における免疫療法に関連するリスクは明確に記述されておらず、研究の実施が求められている - 特定の症状、肺炎または感染症を注意深く観察し、速やかに治療を中止し、場合によってはCOVID-19診断機関に紹介することが推奨される
  • 経口化学療法は、予測可能で管理可能な毒性を考慮して、可能な限り優先的に投与し、複数コース分を処方し、遠隔医療で管理すべきである
  • mTOR阻害剤の追加は当面の優先順位が低く、避けるべきである。誘導免疫抑制(エベロリムス)、糖尿病のリスク(アルペリシブ)、CTスキャンを必要とする肺の副作用のリスク、およびCOVID-19アルゴリズムと重なる他の医療サービスは、これらの薬剤を延期し後ろのラインで併用する理由となり得る(例えば、COVID-19のリスクを増大させる複数の併存疾患を有するフレイルな患者での組み入れ)。
  • 転移乳がんでは、多職種キャンサーボードでの議論と患者の希望に応じて、後ろのラインでは、適切な場合には、休薬、BSC、遅延レジメンまたはde-エスカレートしたメンテナンスレジメンについて議論することがある

List of abbreviations: BIRADS, Breast Imaging-Reporting and Data System; COVID-19, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2-related disease; CT, computed tomography; DCIS, ductal carcinoma in situ; ECG, electrocardiogram; ER, oestrogen receptor; G-CSF, granulocyte colony-stimulating factor; HER2, human epidermal growth factor receptor 2; i.m., intramuscular; LHRH, luteinising hormone releasing hormone; MRI, magnetic resonance imaging; mTOR, mammalian target of rapamycin; PD-L1, programmed death-ligand 1: PR, progesterone receptor; TDM1, trastuzumab emtansine; TNBC, triple-negative breast cancer; US, ultrasonography.

和訳:下村昭彦、荒木和浩、稲垣里奈、公平誠、
校正:高山哲治
2020年5月24日 (6月10日改訂)


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: COLORECTAL CANCER(CRC)を和訳しました。(https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic/gastrointestinal-cancers-colorectal-cancer-crc-in-the-covid-19-era外部サイトへ移動を和訳しました。
Publication date: April 2020. 出版日:2020年4月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

がん診療における優先度
 COVID-19流行下におけるがん診療に対して、ESMOは3段階の優先順位をつけている。すなわち、1. 最も優先して行うべき 「高優先度」、2 中等度に優先して行うべき 「中優先度」、3 優先度の低い「低優先度」 に順位付けを行っている。これはthe criteria of the Cancer Care Ontario, Huntsman Cancer Institute及びESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale (ESMO-MCBS)の基準に従い定義され、介入に基づく優先順位付けと臨床的重要性に関する情報が組み込まれている。
高優先度: 患者の状態が致死的、臨床的に不安定、または介入(検査や治療)による利益の大きいと考えられる (たとえば、全生存期間[OS]を大幅に改善するおよび/または生活の質[QOL]を大幅に改善)。
中優先度: 患者は差し迫った状況には無いが、6週間以上介入(検査や治療)が遅れると、生存期間、予後、QOLに悪影響を与えるもの。
低優先度:COVID-19流行中であれば、患者の検査や治療を延期できる程度に十分安定しているもの、または、ベネフィットを考えると優先的とは言えない検査や治療(たとえば、生存率の向上やQOLの低下に寄与しないもの)。

大腸がん患者における優先度

外来診療における優先度
高優先度

  • 不安定な状態 (急に出現する腹痛、腸閉塞、腹水、外科治療/内視鏡治療/放射線治療後の合併症、下 痢、重篤な皮膚毒性、新しく出現した症状、臨床的ながんの進展)
  • 症状のある新しいがん患者 (症状のある腹水、腸閉塞、慢性下痢)

中優先度

  • 新たにがんと診断された無症状の患者 (手術を予定されていない患者)
  • 新たにがんと診断され手術後であり、補助化学療法または一次治療を予定されている患者
  • 化学療法/放射線療法関連の重篤な副作用のある症例
  • 新しい問題または症状のある既往患者:できるだけ電話診療(オンライン診療)への変更

低優先度

  • セカンドオピニオン
  • 大腸がんの2次予防:もし可能であれば、近医にて採血及び画像検査を行い、電話診療に変更する
  • 臨床研究以外の経過観察
  • 転移巣または原発巣の根治的手術を目指していない病状の画像評価の検査
  • 3次治療または4次治療の画像評価の検査
  • 維持療法中の経過観察:もし可能であれば、近医にて採血及び画像検査を行い、電話診療に変更する

画像検査、放射線による検査及び内視鏡検査の優先度
高優先度

  • 腸閉塞、出血、穿孔、外科手術後合併症、インターベンション処置後の合併症が画像的に確認された症例
  • 骨転移による骨折が画像的に確認された症例

中優先度

  • 臨床的に大腸がんを疑われる症例の画像検査/内視鏡検査による診断 (臨床的、腫瘍マーカー、家族歴など)
  • 高リスクを有する症例の画像検査/内視鏡検査による診断 (家族性の大腸がんや鋸歯状ポリポージス症候群)

低優先度

  • 大腸がんの2次予防:もし可能であれば、近医で予定された便潜血検査や画像検査を受ける、または電話診療を受ける
  • 臨床試験以外の経過観察のための受診
  • 根治的手術を目指していない転移症例における転移巣や原発巣の病期診断のための検査
  • 3次治療や4次治療の病期診断のための検査

外科手術の優先度
高優先度

  • 新規大腸がん患者において腸閉塞の確定診断が得られた症例
  • 腸穿孔、腹膜炎
  • 大量胃腸出血
  • 外科手術後の合併症 (穿孔、縫合不全)
  • 大腸内視鏡後の合併症 (穿孔、出血)
  • 肝生検や肺生検などのインターベンション処置後の合併症 (穿孔、臓器障害、腹膜炎、膿瘍、大量出血)
  • 骨転移による脊髄圧迫による骨折

中優先度

  • ステージI, II, IIIの大腸がん
  • ステージIの直腸がん
  • ステージII,IIIの直腸がんの術前化学療法後
  • 少数転移巣患者における根治的手術または術前化学療法後の手術

低優先度

  • 放射線療法後の完全寛解後の早期直腸がん (watch-and-wait)
  • 家族性大腸がん症例の予防的手術
  • サルベージ療法における遺伝子解析のための転移巣の生検. 最終ライン治療を開始してCOVID-19の流行が終わってから政権をして下さい。もし可能であれば、政権ではなくリキッドバイオプシーを実施して下さい。

早期結腸がんの化学療法
高優先度

  • 入院を必要とするような(外科手術、放射線治療、化学療法)治療後の重篤な合併症

中優先度

  • 高リスクなステージII結腸がんの術後補助化学療法
  • ステージII結腸がん症例のうち、治療方針の決定にMSI検査やDPD検査が示唆されるもの
  • 低リスクまたは高リスクなステージIII症例の術後補助化学療法。5-FU持続静注よりカペシタビン+オキサリプラチンを考えるべきである。さらに、IDEA試験やオキサリプラチン関連副作用を考慮して6ヶ月間の治療よりも3ヶ月間の治療を実施するべきである。

低優先度

  • 臨床的症状が落ち着いている症例における毎週の血液検査
  • 患者のリスク/ベネフィット比を考慮して行う画像検査(CT検査など)

早期直腸がんの化学療法
高優先度

  • 入院を必要とするような(外科手術、放射線治療、化学療法)治療後の重篤な合併症。外来診療の予約 を避けて、トリアージ後に直接病室に入る。

中優先度

  • 高リスクなステージII直腸がんの術後補助化学療法
  • 臨床試験における治療の継続

低優先度

  • 臨床的症状が落ち着いている症例における毎週の血液検査
  • 患者のリスク/ベネフィット比を考慮して行う画像検査(CT検査など)

進行結腸がんの化学療法
高優先度

  • 入院を必要とするような(外科手術、放射線治療、化学療法)治療後の重篤な合併症。外来診療の予約を避けて、トリアージ後に直接病室に入る。

中優先度

  • 腫瘍減量を目的とするPS 0-2 (ECOG スケール)症例の1次治療
  • 巨大腫瘍の減量または根治手術を目指すPS 0-2症例の1次治療
  • 補助化学療法後に間も無く再発したPS 0-2 (ECOG スケール)の1次治療
  • 短いPFS後のPS 0-2症例の2次治療
  • MSI-H 転移性大腸がんの2次治療としての免疫療法
  • 臨床試験における治療の継続

低優先度

  • ベネフィットが低いと予想される治療、維持療法、腫瘍量の少ない患者及び進行が緩徐な患者では全ての治療を遅らせるべきである
  • PS 3及び重い合併症を有する患者では1次治療を含む全ての治療を遅らせるべきである
  • 重篤な合併症を有する補助化学療法中の症例も全ての治療を遅らせるべきである。
  • 症状が緩徐に進行する再発症例匂いては全ての治療を遅らせるべきである。

放射線治療の優先度
高優先度

  • 病状の進行による重篤な合併症 (臓器不全を伴う圧迫、出血、痛み、骨折、圧迫症状を伴う縦隔腫瘤、有症状の脳転移)。外来受診予約を避けて、医療スタッフと打ち合わせて、トリアージ後にまっすぐ検査室・治療室へ行く。

中優先度

  • ステージII /III直腸がんに対する術前/術後補助化学療法
  • 少数の転移病巣により全身化学療法が禁忌となっている症例に対するSIRT選択的内照射療法

低優先度

  • 有症状ではあるが緩徐に進行する再発性腫瘍や腫瘍量の少ない緩徐に進行する患者を対象とした、期待されるベネフィットがわずかなすべての放射線治療

早期 (II, III)大腸がんに対する化学療法

  • 治療方針の決定においては、とくにステージII患者ではMSI検査を行う
  • もし可能であれば、われわれはカペシタビンの投与量を決めるためにDPD検査の実施を進める。
  • 5-FUの持続静注よりもカペシタビン投与を勧める。
  • IDEA試験の推奨に基づいて、3ヶ月間の補助化学療法が6ヶ月の補助化学療法に劣らないかどうかを評する (患者のリスクと臨床的状況によるストラテジーの採用)
  • 感染や合併症の兆候が無ければ毎週の血液検査を避ける
  • 毎週の副作用や容量適応状況のモニタリングは電話診療を考慮する
  • 次のオキサリプラチン治療などに入る前に、近医における採血や電話診療によって治療遅延が必要かどうかを考える
  • 繰り返して好中球減少をきたす患者には、発熱性好中球減少症や入院のリスクを下げるためにG-CSF投与 を考慮する。

進行 (IV)大腸がんに対する化学療法
1. 1次治療

  • FOLFIXIRI +/- 抗VEGF or 抗EGFR抗体:外来で治療を行い、副作用を防ぐために最大限のサポートを行う; 発熱成好中球減少や入院を防ぐためにペグフィルグラスチムの適応を考える。
  • FOLFIRI or FOLFOX +/- 抗VEGF抗体 or 抗EGFR抗体: 外来で治療を行い、発熱成好中球減少や入院を防ぐためにペグフィルグラスチムの投与を考慮する。とくに合併症や化学療法後の好中球減少症の既往のある患者では考慮する。
  • FOLFIRIまたはFOLFOX + 抗EGFR抗体:セツキシマブの1週間隔の治療より、2週間間隔の治療を考慮する。あるいは、パニツムマブ投与を考慮する。

2. 2次治療

  • 緩徐な進行/増殖を呈する患者では、2周間隔で治療することを考慮する。もし毒性や回復が遅くて可能で無ければ、3週サイクルで治療することを考慮する。

3. 維持療法

  • 3週サイクルとされる治療スレジメンを考得るべきである。
  • 5-FUの持続静注よりもカペシタビン投与を考慮する。

4. RegorafenibやTAS-102による3次治療

  • 毎週の副作用のコントロールには電話診療を考慮する。血液検査は近医で実施ても良い。

早期直腸がんに対する放射線療法

  • 長期コースの放射線治療の代わりに、短期間コースの放射線療法 (5 x 5) +/- カペシタビン を行うことを考慮する
  • オキサリプラチンを含む化学療法との併用を予定するときには、5-FU持続静注療法の代わりにカペシタビン併用を考慮する

略語: 5-FU, 5-fluorouracil; COVID-2, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2-related disease; DPD, dihydropyrimidine dehydrogenase; ECOG, Eastern Cooperative Oncology Group; EGFR, epidermal growth factor receptor; FOLFIRI, folinic acid/5-fluorouracil/irinotecan; FOLFOX, folinic acid/5-fluorouracil/oxaliplatin; FOLFOXIRI, folinic acid/5-fluorouracil/oxaliplatin/irinotecan; G-CSF, granulocyte colony-stimulating factor; mCRC, metastatic CRC; MSI, microsatellite instability; MSI-H, microsatellite instability-high; PFS1, first progression-free survival; PS, performance status; SIRT, selective internal radiotherapy; TAS-102, trifluridine/tipiracil; VEGF, vascular endothelial growth factor.

和訳:佐藤康史
校正:高山哲治
2020年5月28日 (6月10日改訂)


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: DIFFUSE LARGE B-CELL LYMPHOMA, MANTLE CELL LYMPHOMA AND AGGRESSIVE T-CELL LYMPHOMASを和訳しました。
https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic/haematological-malignancies-dlbcl-mcl-and-aggressive-t-cell-lymphoma-in-the-covid-19-era外部サイトへ移動
Publication date: April 2020. 出版日:2020年4月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

がん診療における優先度
 COVID-19流行下におけるがん診療に対して、ESMOは3段階の優先順位をつけている。すなわち、1. 最も優先して行うべき 「高優先度」、2 中等度に優先して行うべき 「中優先度」、3 優先度の低い「低優先度」 に順位付けを行っている。これはthe criteria of the Cancer Care Ontario, Huntsman Cancer Institute及びESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale (ESMO-MCBS)の基準に従い定義され、介入に基づく優先順位付けと臨床的重要性に関する情報が組み込まれている。
高優先度: 患者の状態が致死的、臨床的に不安定、または介入(検査や治療)による利益の大きいと考えられる (たとえば、全生存期間[OS]を大幅に改善するおよび/または生活の質[QOL]を大幅に改善)。
中優先度: 患者は差し迫った状況には無いが、6週間以上介入(検査や治療)が遅れると、生存期間、予後、QOLに悪影響を与えるもの。
低優先度: COVID-19流行中であれば、患者の検査や治療を延期できる程度に十分安定しているもの、または、ベネフィットを考えると優先的とは言えない検査や治療(たとえば、生存率の向上やQOLの低下に寄与しないもの)。

びまん性大細胞性B細胞リンパ腫 (DLBCL)患者の優先度

高優先度

  • アグレッシブリンパ腫の根治的治療:
    • 治療の根治性を落とすことなく、来院回数の少ない化学療法スケジュールに変更しても良い。
    • 患者は、好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF投与を受けるべきである
    • 骨髄抑制を来しにくいレジメンが好まれる。(例えば、CHOEP-14やACVBPの代わりにCHOP-21)
  • DLBCLの再発時の自家幹細胞移植を伴う大量化学療法
  • 臨床試験における治療の継続
  • 治療抵抗性DLBCLのCAR-T細胞治療

中優先度

  • 非根治的治療(例えば、自家幹細胞移植の適応の無い再発性アグレッシブリンパ腫に対する
    • 患者は、好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF投与を受けるべきである。
    • T細胞抑制性薬剤(ベンダムスチン)の投与を避ける
  • CNS予防のための大量メソトレキセート療法、大量シタラビン療法、髄腔内メソトレキセート療法は省略して良い。
  • 緩和的放射線療法は遅らせて良い。
  • 地固め放射線療法 (例えば、初回の巨大腫瘤や節外病変)は遅らせて良い。

低優先度
無し

マントル細胞リンパ腫(MCL)患者の優先度

高優先度

  • マントル細胞リンパ腫(MCL)に対する1次治療
    • 来院回数の少ない化学療法スケジュールに変更しても良い。
    • 患者は、好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF投与を受けるべきである。
  • 臨床試験における治療の継続

中優先度

  • 再発性MCLに対する全身化学療法は、来院回数の少ない治療に変更しても良い
    • 患者は、好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF投与を受けるべきである。
    • T細胞抑制性薬剤(ベンダムスチン)の投与を避ける
  • 地固め療法としての自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は遅らせて良い。
  • リツキシマブによる維持療法は遅らせて良い
  • 緩和的放射線療法は遅らせて良い。

低優先度
無し

アグレッシブT細胞性リンパ腫患者の優先度

高優先度

  • 1次治療
    • 来院回数の少ない化学療法スケジュールに変更しても良い。
    • 患者は、好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF投与を受けるべきである。
  • 臨床試験における治療の継続

中優先度

  • 再発例に対する全身化学療法は来院回数の少ない治療に変更しても良い。
    • 患者は、好中球減少を最小限に抑えるためにG-CSF投与を受けるべきである。
    • T細胞抑制性薬剤(ベンダムスチン)の投与を避ける
  • 地固め療法としての自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は遅らせて良い。
  • 緩和的放射線療法は遅らせて良い。

低優先度
無し

略語: ACVBP, doxorubicin/cyclophosphamide/vindesine/bleomycin/prednisone; CAR-T cell, chimeric antigen receptor T cell; CHOEP, cyclophosphamide/doxorubicin/vincristine/etoposide/prednisolone; CHOP, yclophosphamide/doxorubicin/vincristine/prednisolone; CNS, central nervous system; COVID-2, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2-related disease; DLBCL, diffuse large B-cell lymphoma; G-CSF, granulocyte colony-stimulating factor; MCL, mantle cell lymphoma.

和訳:下田和哉
校正:高山哲治
2020年5月29日 (6月10日改訂)


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: LUNG CANCER を和訳しました。
https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic/lung-cancer-in-the-covid-19-era外部サイトへ移動を和訳しました。
Publication date: April 2020. 出版日:2020年4月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

がん診療における優先度
 COVID-19流行下におけるがん診療に対して、ESMOは3段階の優先順位をつけている。すなわち、1. 最も優先して行うべき 「高優先度」、2 中等度に優先して行うべき 「中優先度」、3 優先度の低い「低優先度」 に順位付けを行っている。これはthe criteria of the Cancer Care Ontario, Huntsman Cancer Institute及びESMO-Magnitude of Clinical Benefit Scale (ESMO-MCBS)の基準に従い定義され、介入に基づく優先順位付けと臨床的重要性に関する情報が組み込まれている。
高優先度: 患者の状態が致死的、臨床的に不安定、または介入(検査や治療)による利益の大きいと考えられる (たとえば、全生存期間[OS]を大幅に改善するおよび/または生活の質[QOL]を大幅に改善)。
中優先度: 患者は差し迫った状況には無いが、6週間以上介入(検査や治療)が遅れると、生存期間、予後、QOLに悪影響を与えるもの。
低優先度:COVID-19流行中であれば、患者の検査や治療を延期できる程度に十分安定しているもの、または、ベネフィットを考えると優先的とは言えない検査や治療(たとえば、生存率の向上やQOLの低下に寄与しないもの)。

肺がん患者における優先度

外来診療における優先度
高優先度

  • 下記の侵襲性肺癌の新規症例または疑い症例
    • 疾患関連の症状(呼吸困難、疼痛、喀血など) がある
    • 臨床病期II、IIIA、IIIB、転移を有する非小細胞肺癌、小細胞肺癌
  • 治療導入のための外来受診

中優先度

  • 臨床病期Iの限局性肺癌の新規診断症例または疑い症例
  • 合併症のない術後患者
  • 再発のリスクが高い患者のフォローアップ
  • 新しい問題または症状のある既往患者:できるだけ電話診療(オンライン診療)への変更

低優先度

  • がんサバイバーの定期受診
  • 再発リスクが低/中程度の患者の定期受診
  • 心理的サポートのための受診(電話、オンライン診療へ変更)

肺癌における画像診断の優先度
高優先度

  • 重大な呼吸器症状および/またはその他の臨床的に関連のある胸部、癌または治療関連の症状がある患者。呼吸困難、発熱を伴うまたは伴わない咳などの新しい呼吸器症状のある患者では、CTが推奨される
  • 臨床病期II / III / IVまたは病期不明の肺癌が疑われる患者の標準的な病期分類のための検査
  • III / IV期が疑われる肺癌疑い症例の結節または腫瘤の生検
  • 治療の最初の6か月、または任意の時点で進行の疑いがある場合の積極的な治療反応評価
  • 臨床試験プロトコルで事前に計画された画像評価

中優先度

  • 根治的治療後1年以内の再発高/中リスク症例の画像検査
  • 早期肺がんの標準的な病期分類の精密検査
  • I / II期または病期不明な浸潤性癌の結節または腫瘤の生検
  • 治療により新たな問題または症状が認められた既往患者
  • 安定した状況で、6か月を超える治療に対する積極的な治療反応の評価
  • 以下のいずれかによる偶発的所見の結節のフォローアップ:
    • 50-500 mm3の充実性結節
    • 胸膜に接する5-10 mmの充実性結節
    • 非充実性成分が8 mm以上の部分的充実性結節
    • 既知のVDT(体積倍増時間)400〜600日

低優先度

  • 根治的治療完了後1年以上経過した高/中再発リスク症例の画像フォロー
  • 再発リスクの低い症例の根治的治療後の画像フォロー
  • 以下のいずれかによる偶発的所見の結節のフォローアップ:
    • 50 mm3未満の充実性結節
    • 胸膜に接する5 mm未満の充実性結節
    • 8 mm未満の非充実成分を含む充実性結節
    • 8 mm未満の非充実性結節
    • 良性の形態の結節
    • 既知のVDT 600日
  • 肺がんのスクリーニングは、COVID-19のパンデミックが解決するまで延期することができる
  • 一般集団の患者が、低線量CTのスクリーニングを延期することは合理的である
  • これは、全生存に影響を与える可能性が低い延期である

肺癌患者における外科手術の優先度
高優先度

  • 胸腔ドレナージかつ、または胸膜癒着の必要な胸水、心タンポナーデのリスクのある心嚢液
  • 膿胸膿瘍の合併症例
  • 未治療または術前化学療法後のT2N0症例
  • 未治療または術前化学療法後の切除可能T3 / T4症例
  • 未治療または術前化学療法後の切除可能なN1 / N2症例
  • 診断/病期診断のための縦隔鏡検査/胸腔鏡検査/胸膜生検/内視鏡検査/経胸壁検査などの診断

中優先度

  • 悪性である可能性が高い不一致な生検
  • 切除可能なT1AN0 NSCLC症例(外科的治療ができない場合は、定位放射線療法を提案するが、手術が推奨される)
  • 以下のいずれかの診断的検査および/または偶発的所見の結節の切除:
    • 500 mm3以上の充実性結節
    • 胸膜に接した10㎜以上の充実性結節
    • 充実成分が500mm3以上の部分的な充実性結節
    • 既知のVDT400日未満の結節
    • 既存の非充実性結節に充実性の変化が生じた場合
    • (手術が必要で、手術能力が定位放射線療法でない場合の代替案)

低優先度

  • 良性である可能性が高い不一致な生検
  • 切除可能なpureGGN(T1a)
  • 以下を含む、偶発的所見の他のすべての結節の診断的手術および/または切除
    • 500 mm3以上の充実性かつ、既知のVDT 600日以上の結節
  • (手術が必要で、手術能力が定位放射線療法でない場合の代替案)

肺癌における優先度、早期肺癌の化学療法
高優先度

  • SCLCの病期I / IIに対する化学放射線療法
  • II期症例の術前補助化学療法(3ヶ月まで手術の延期を可能にする)
  • T3 / 4またはN2症例における若年(65歳)かつ適格症例に対する術後補助化学療法
  • 発熱性好中球減少症のリスクが10〜15%と評価される症例のG-CSFの使用

中優先度

  • T2b-T3N0またはN1疾患における補助化学療法は、臨床的特徴および予後を考慮して、患者と話し合う
  • 2サイクル間のフォローアップは、必要な場合にのみ電話診療で行うことを検討
  • 2サイクル間の血液検査は、必要な場合にのみ、可能であれば自宅で実施

低優先度

  • T1A〜T2bN0期の予後因子(リンパ管浸潤、組織学的サブタイプ等)が陰性の症例における術後補助化学療法。リスクと利益について、患者と個別に話し合う必要あり
  • 重大な併存疾患のある患者、または70歳以上の高齢患者に対する補助化学療法については、省略する可能性も含めて検討する必要がある

肺癌における優先度、局所進行肺癌の化学療法
高優先度

  • SCLCのLD症例 III期に対する化学放射線療法
  • 手術不能NSCLC III期に対する併用または逐次化学放射線療法
  • 化学放射線療法後のデュルバルマブによる治療(42日以内)
  • 臨床病期III期に対する術前補助化学療法
  • 発熱性好中球減少症のリスクが10〜15%の場合のG-CSF使用

中優先度

  • 2サイクル間のフォローアップは、必要な場合にのみ電話診療で行う
  • 2サイクル間の血液検査は、必要な場合にのみ、可能であれば自宅で実施を検討

低優先度

  • 該当なし

肺癌における優先度、進行期肺癌の化学療法
高優先度

  • 予後、がん関連症状、QoLを改善するための化学療法、化学療法と免疫チェックポイント阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤単独、またはTKIによる一次治療
  • 症候性および病状が進行する症例の二次化学療法または免疫チェックポイント阻害剤による治療
  • PD症例におけるTKIによる2次治療の開始
  • 最適な用量変更にもかかわらず、発熱性好中球減少症のリスクが10%以上ある症例のG-CSFの使用
  • 抗PD-(L)1抗体による治療スケジュールは、受診を減らすために変更/遅延を検討可能(たとえば、規制当局から許可されている場合、2週間または3週間の投与の代わりに4週間または6週間の投与を検討)

中優先度

  • 脅威となる病変がない、無症候性の患者に対する2次以降の化学療法または免疫療法の開始
  • 可能であれば、通院を減らすために静脈投与(エトポシド、ビノレルビン)から経口投与への変更
  • 2サイクル間のフォローアップは、必要な場合にのみ電話診療を検討
  • 2サイクル間の血液検査は、必要な場合にのみ、可能であれば自宅で実施
  • 12/18か月を超えてIOを継続している患者の場合、次のサイクルを遅らせるか、一部の省略、間隔の延長を検討

低優先度

  • 2年以上治療された免疫療法の中止を検討
  • 毒性のために免疫チェックポイント阻害剤を休薬とした症例における、疾患の進行がない場合の再開の延期
  • 緊急を要さないゾレドロン酸、デノスマブ投与の延期

肺癌における放射線治療の優先度
高優先度

  • 化学療法禁忌の手術不能II~III期肺癌症例に対する放射線療法
  • 手術不能NSCLC II / III期に対する併用(推奨)または逐次化学放射線療法
  • SCLC-LDに対する併用(推奨)または逐次化学放射線療法
  • 上大静脈閉塞、重大な喀血、脊髄圧迫、重大な骨の疼痛または生命に重篤な影響を及ぼす合併症に対する
  • 緩和的放射線療法

中優先度

  • I期症例に対するSABR-SBRT
  • NSCLCの適応症例における、R1切除の術後補助放射線治療
  • SCLC-LDにおける化学療法後のPCI

低優先度

  • NSCLCにおけるN2 R0症例の術後補助放射線治療については検討する必要があり、術後補助化学
  • 療法の終了時または術後3か月まで延期することを検討する
  • SCLC-ED症例のPCIはMRIによるフォローアップへの変更を検討
  • 軽度の骨や胸の痛みなどの生命にかかわらない状況での緩和放射線治療

略語: COVID-2, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2-related disease; CT, computed tomography; G-CSF, granulocyte colony-stimulating factor; GGO, ground-glass opacity; IO, immune-oncology; NSCLC, non-small cell lung cancer; QoL, quality of life; PD-1, programmed cell death protein 1; PD-L1, programmed death-ligand 1; SABR, stereotactic ablative radiotherapy; SBRT, stereotactic body radiotherapy SCLC, small cell lung cancer; TKI, tyrosine kinase inhibitor; VDT, volume doubling time.

和訳:小林信明、西川正憲、姫路大輔、古屋直樹
校正:高山哲治
2020年5月12日 (6月10日改訂)


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得てESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: Multiple Myelomaを和訳しました。
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Publication date: April 2020. 出版日:2020年7月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

1. 若年、移植適応患者

高優先度
初発活動性/高リスク(SLiM-CRAB規準あり)患者:

  • 治療は延期すべきではない。
  • 患者ごとにステージ、リスク、年齢、遺伝子学的検査/FISH検査、併存疾患を加味し治療を決める。
  • 好中球減少のリスクを最小限にするためにG-CSFの投与を考慮する。

中優先度
初回治療を受けている患者:

  • 自家移植併用大量化学療法(ASCT)の延期や、寛解導入療法を6-8サイクルまで延長することを考慮する。
  • ASCTを予定している患者では、ASCT前にCOVID-19感染の有無を検査すべきである。
  • 標準リスクの患者では、寛解導入療法のサイクルを追加するか、またはレナリドミドの維持療法を行うことによりASCTの延期を考慮する(このような群では、最近の3剤併用寛解導入後にASCTによる地固めをせずにレナリドミドの維持療法を行うのと比較し、早期のASCTのOSのベネフィットは証明されていない)。
  • 治療の忍容性を確認する際には、できるだけ電話やオンライン診療を利用し、病院への通院回数を減らす。
  • レナリドミドの維持療法を受けている患者では、処方期間を2ヶ月に延ばすことを考慮する(その間は電話診療や遠隔検査を利用する)。
  • IVIgの補充が必要な患者では、投与頻度を減らした投与を考慮する。
  • 好中球減少を最小限にするためにG-CSFの投与を考慮する。

低優先度
安定した寛解患者(現在無治療):

  • フォローアップの通院を延期し、可能なら電話診療を行う。
  • 骨吸収抑制薬(ゾレドロン酸、デノスマブ)の投与を延期する。あるいは、投与回数を減らす(例えば、3ヶ月ごと)。

2. 高齢、移植非適応の初発多発性骨髄腫患者

高優先度
初発活動性/高リスク(SLiM-CRAB規準あり)患者:

  • 治療は延期すべきではない。
  • 患者ごとにステージ、リスク、年齢、遺伝子学的検査/FISH検査、併存疾患を加味し治療を決める。
  • 好中球減少のリスクを最小限にするためにG-CSFの投与を考慮する。

中優先度
治療中の患者:

  • レナリドミド/デキサメタゾン療法で奏効している患者:デキサメタゾンの中止を考慮し、レナリドミド単独で効果を維持させる。
  • 経口投与可能な薬を選択する。
  • 点滴治療が必要な場合、投与回数を減らした投与を考慮する。
  • 治療の忍容性や結果をモニターする際には、できるだけ電話やオンライン診療を利用する。
  • デキサメタゾンは20mg/週以下に減量する。
  • 好中球減少のリスクを最小限にするためにG-CSFの投与を考慮する。

低優先度
安定した寛解にある継続治療中(あるいは無治療)の患者:

  • フォローアップの受診を延期し、可能なら電話診療を行う。
  • 骨吸収抑制薬(ゾレドロン酸、デノスマブ)の投与を延期する。あるいは、投与回数を減らす(例えば、3ヶ月ごと)。

3. 再燃/難治性多発性骨髄腫患者

高優先度
治療が必要な再発 (新たなSLiM-CRAB項目の出現、または有意なM蛋白再発)または難治性多発性骨髄腫患者:

  • 治療は延期してはならない。
  • 患者ごとにステージ、リスク、年齢、遺伝子学的検査/FISH検査、併存疾患を加味し治療を決める。
  • 好中球減少のリスクを最小限にするためにG-CSFの投与を考慮する。

中優先度
治療中の再燃/難治の患者:レナリドミド/デキサメタゾン療法が奏効する患者では、下記の例のように治療レジメンの変更を考慮し、通院回数を最小限にする。:

  • 週に2回の投与を1回にする(カルフィルゾミブやボルテゾミブなど)
  • 経口薬を優先する(イキサゾミブ、レナリドミド、ポマリドミドなど)。
  • ダラツムマブはできるだけ早く月一回の投与に変更する。

低優先度
安定した寛解にある継続治療中の再燃/難治の患者:

  • 骨吸収抑制薬(ゾレドロン酸、デノスマブ)の投与を延期する。あるいは、投与回数を減らす(例えば、3ヶ月ごと)。

4. くすぶり型多発性骨髄腫または意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症患者

高優先度
なし

中優先度
高リスク(個々のリスクに応じた判断)のくすぶり型多発性骨髄腫患者では、経過観察のための受診は遅らせるか通院回数を減らす。または、可能なら電話診療や地元での検査で予定診療を行う。

低優先度
低リスクのくすぶり型多発性骨髄腫や意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症患者は、予定通院を延期する。または、可能なら電話診療や地元での検査で予定診療を行う。

略語: ASCT, autologous stem cell transplantation; FISH, fluorescent in situ hybridization; G-CSF, granulocyte colony-stimulating factor; IVIg, intravenous immunoglobulin; OS, overall survival

和訳:中村信元、三木浩和
校正:安倍正博


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て、ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: Indolent B-NHL (Follicular Lymphoma, Marginal Zone Lymphoma, Waldenström’s Macroglobulinaemia)を和訳しました。
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Publication date: April 2020. 出版日:2020年7月
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高優先度
低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫では、生命を脅かす状況は稀ではあるが、重要臓器の圧迫やマクログロブリン血症における中枢神経浸潤 (Bing-Neel症候群)などが起こることがある。このような場合は、治療を迅速に開始すべきか、待機すべきかを治療の長所・短所をよく評価し、個々の患者の状況を考慮して決定すべきである。

  • 化学療法のスケジュールは、免疫抑制を軽減し、通院回数を最小限にするために変更してもよい。
  • 好中球減少のリスクを最小限にするためにG-CSF投与を考慮する。

治癒のための放射線治療

中優先度
進行期低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫では、可能な限りwatch & waitの方針をとるべきである。

  • 治療が必要な患者は、標準的なガイドラインに従った治療を受けるべきである。
  • 免疫抑制作用が少ない治療を選択し、通院回数をへらす。
  • COVID-19の血清反応陽性で症状のない患者では、可能であれば陰性化するまで治療を遅らせるべきである。化学療法中の患者が、COVID-19の血清反応が陽転した場合は、慎重に観察し、患者の状況に応じて化学療法の一時中断または中止を考慮するべきである。COVID-19の症状が出現した場合は、化学療法を中止すべきである。
  • COVID-19のパンデミック下では、長期間持続する免疫抑制を避け、通院回数を減らし、COVID-19対応に必要な病院のリソースを確保するために、抗CD20抗体の維持療法のようなオプションの治療は避けるべきである。

低優先度
緊急な治療が必要な場合以外は、すべての患者にwatch & waitを厳格に続けるべきである。

略語: CNS, central nervous system; COVID-19, SARS-cov-2-related disease; G-CSF, granulocyte colony-stimulating factor

和訳:中村信元、三木浩和
校正:安倍正博


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: Hepatocellular Carcinoma (HCC)を和訳しました。
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COVID-19時代の肝細胞癌患者

HCC患者の予後は、基礎となる肝疾患の病期に大きく依存する。COVID-19パンデミック時の肝疾患患者のケアのための対策は、最近、欧州肝臓学会(EASL)によって提案された。これらの推奨事項には、HCC患者が含まれる[1]。

肝細胞癌患者における優先度

外来診療における優先度
高優先度

  • 非代償性肝疾患の患者
  • 肝移植の待機リストにある患者
  • HCCが疑われる患者
  • 治療の開始または変更を待つ、HCCが証明されている患者
  • 治療に中等度または重度の副作用を示す患者

中優先度

  • HCCが疑われる病変が1cm未満の患者
  • 治療に対する反応と忍容性を示す患者(遠隔医療/電話で受診する場合がある)
  • 治療に軽度の副作用を示す患者
  • セカンドオピニオン

低優先度

  • 5年以上の長期寛解状態の患者(血液検査と画像診断を自宅の近くでスケジュールし、遠隔医療/電話で報告する)
  • 肝機能の再代償に対する治療選択肢のない末期HCC(BCLC D、Child-Pugh C)の患者(電話により、家の近くに最高の支持療法が可能な場合)

HCCに対する優先度:画像検査
高優先度

  • HCCが疑わしい病変の放射線診断精密検査
  • 治療反応の放射線学的評価
  • 骨転移の放射線学的評価
  • 肝機能の代償不全がある患者

中優先度

  • HCC疑いのある肝病変、進行なしで1 cm未満

低優先度

  • HCC監視は、センターで利用可能なリソース(HCCと診断された症例の治療オプションの可用性を含む)と個々のリスク評価に基づいて延期することができる。リソースが限られている場合は、αフェトプロテイン値の上昇、進行性肝硬変、B型慢性肝炎、NASH /糖尿病などのリスクが高い患者を優先することができる。
  • HCCから5年以上の長期寛解の患者(血液検査と画像診断を自宅近くでスケジュールし、遠隔医療/電話で報告)

HCCに対する優先度:外科手術
高優先度

  • 肝移植(急性/慢性肝不全急性増悪(ALF / ACLF)を含む予後が短期間で不良な患者に優先順位付けされた症例、末期肝疾患(MELD)スコアの高いモデル(例外的なMELDを含む)およびミラノ基準の上限でのHCC)
  • 大きなまたは多巣性であるが依然として治癒的に切除可能なHCC病変を有する患者に対する治療目的のある外科的意図

中優先度

  • 代償性肝疾患患者の移植リスト、ミラノ基準の下限内
  • 小さな単一HCC病変の治癒的外科的切除

低優先度

HCCに対する優先度:全身治療
高優先度

  • 初回とそれに続くラインの全身治療。 ただし、可能であれば、外来診察の予約を避け、自宅の近くでフォローアップ評価を計画し、遠隔医療/電話によるコミュニケーションを計画する。

中優先度

  • 反応の可能性が低い実験的治療

低優先度

  • 臨床状態や症状が必要としない限り、毎週の血液検査
  • 患者のリスク/ベネフィット比を考慮した放射線評価

HCCに対する優先度:放射線腫瘍学
高優先度

  • 肝移植を待っているステージBCLC Aの患者に対するつなぎ治療としての放射線治療(TACE、SIRT / TAREなど)
  • 緩和的な状況での生存利益が期待される放射線治療を受けている患者(ステージBCLC BまたはC)

中優先度

  • 非常に早い段階での肝移植のつなぎとしての放射線治療(BCLC 0)
  • 小さな単一HCC病変の治癒的焼灼(≤2cm)

低優先度

  • わずかな効果が期待されるすべての治療の遅延

略語一覧: HCC, hepatocellular carcinoma; NASH, non-alcoholic steatohepatitis; SIRT, selective internal radiotherapy; TACE, transarterial chemoembolisation; TARE, transarterial radioembolisation.

1. Boettler T, Newsome PN, Mondelli MU et al. Care of patients with liver disease during the COVID-19 pandemic: EASL-ESCMID position paper. JHEP Reports 2020 vol. 2

和訳::田中貴大
校正:高山哲治


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: EPITHELIAL OVARIAN CANCERを和訳しました。
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Publication date: April 2020. 出版日:2020年8月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

上皮性卵巣がん患者における優先度

外来診療における優先度
高優先度

  • 不安定な状態 (急に出現する腹痛、腸閉塞、術後合併症)
  • 症状のある初発患者 (症候性腹水・胸水、腸閉塞) 

中優先度

  • 症状のない初発患者 (手術前)
  • 合併症のない術後患者
  • 化学療法継続中の患者 (可能な場合は電話診療へ変更)
  • 新しい問題または症状のある既往患者:できるだけ電話診療へ変更

低優先度

  • 維持療法としてPARP阻害剤治療の定期通院: (可能であれば自宅近くでの血液検査や画像診断を行い、電話診療に変更)し、郵送による処方配達を検討する
  • 維持療法としてのbevaizumabを継続する場合、血圧と尿検査の確認は電話診療へ変更
  • 臨床研究以外の経過観察

画像検査 (CT) の優先度
高優先度

  • 症状のある患者 (腸閉塞や腸穿孔)

中優先度

  • 症状や超音波で卵巣癌が臨床的に疑われる場合の画像検査

低優先度

  • 臨床研究以外の経過観察
  • 維持療法としてPARP阻害剤継続中の定期検査

外科手術の優先度
高優先度

  • 画像診断で診断確認された初発時の腸閉塞
  • 腸穿孔、腹膜炎
  • 術後合併症: 穿孔や縫合不全
  • 捻転や、尿管もしくは腸管閉塞を伴う骨盤腫瘍

中優先度

  • 強く卵巣癌が疑われる場合の診断目的の手術 (例:審査腹腔鏡)
  • 初回腫瘍減量手術
  • ファーストラインの化学療法を継続し、手術(IDS; interval debulking surgery) を延期することは考慮されるべき
  • 症候性の手術不能な初発・再発患者に対する緩和的処置 (例:人工肛門造設、PEG造設)

低優先度

  • 遺伝性腫瘍に関わる婦人科がんのリスク低減手術
  • 良性が疑われる卵巣嚢腫・卵巣腫瘍
  • 再発腫瘍に対する緩和的切除
  • 完全切除が見込まれる転移数の少ない初回再発に対する手術

腫瘍内科学的治療の優先度 ―進行症例
高優先度

  • 症候性の初発卵巣癌に対する手術前化学療法
  • 高異型度漿液性癌・類内膜癌に対する術後化学療法。この場合はBRCA検査が重要であり、結果によってPARP阻害剤の適応となれば化学療法の短縮も考慮されるべきである。
  • 臨床試験治療中は継続する

中優先度

  • 進行期明細胞癌や粘液性癌のファーストラインの術後化学療法
  • 症状のある、高異型度漿液性癌・類内膜癌のプラチナ感受性再発に対する化学療法

低優先度

  • 症状のある、高異型度漿液性癌・類内膜癌のプラチナ非感受性再発に対する化学療法
  • 症状のあるSlow growthの再発腫瘍に対する化学療法
  • 低異型度漿液性癌の再発に対する化学療法

腫瘍内科学的治療の優先度 ―早期症例
高優先度

  • ステージⅠ-ⅡB-ⅣAの高異型度漿液性癌・類内膜癌に対する維持化学療法
  • 臨床試験治療中は継続する

中優先度

  • ステージⅠC-ⅡA期の粘液性癌 (infiltrative) に対する維持化学療法 

低優先度

  • ステージⅠC-ⅡA期の低異型度漿液性癌・類内膜癌・明細胞癌・粘液性癌 (expansile invasion) に対する化学療法 
  • ⅠC期の低異型度漿液性癌・類内膜癌・明細胞癌・粘液性癌 (expansile invasion) については、あまり化学療法が有用とは言いがたいので、リスクとベネフィットについて患者と話し合う必要がある

進行症例での化学療法

  • プラチナベースの治療:3-4週間毎のカルボプラチンとパクリタキセル併用療法  
  • (通院回数を減らし、骨髄毒性を軽減するため) 
  • 反応性や予後因子に応じて、4-6サイクルを行う 
  • 奏効している場合はPARP阻害剤投与前に、化学療法を4-5サイクルに減らすことも考慮する 
  • パクリタキセルの毒性を考慮して早期中止も検討する 
  • 白血球低下の予防としてGCSサポートを行う 
  • デキサメサゾンを制限して、免疫抑制を軽減させる 
  • bevacizumabによる高血圧でCOVID19に感染した場合の悪影響や、維持療法による医療資源の使用なども注意が必要である 
  • BRCA病的変異を認める高異型度漿液性癌・類内膜癌に対して、プラチナベースの化学療法が奏効した場合はPARP阻害剤による維持療法を行う 
  • BRCA病的変異を認め、PARP阻害剤未使用の場合で、プラチナ製剤投与が困難な場合は、ルカパリブ単剤投与を考慮する (ルカパリブは日本では未承認(訳者)) 
  • プラチナべースではない治療は優先度は低い。リスク・ベネフィットの十分な検討がなされるべきである 

早期症例での化学療法

  • 3-6サイクルのカルボプラチンとパクリタキセル併用療法
  • (6サイクルは高異型度漿液性癌・類内膜癌・明細胞癌で行われる)
  • カルボプラチン6サイクル
  • Vulnerableな患者ではカルボプラチン単剤(AUC5、4週毎投与)を行う
  • Vulnerableな患者とは : 65歳以上、心疾患合併、呼吸器疾患合併

略語:
BP, blood pressure; ChT, chemotherapy; CT, computed tomography; NACT, neoadjuvant chemotherapy; PARP, poly (ADP-ribose) polymerase; PARPi, poly(ADP-ribose) polymerase inhibitor; PEG, percutaneous endoscopic gastrostomy; US,ultrasound.

和訳:阿部彰子
校正:岩佐武


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: CERVICAL CANCERを和訳しました。
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子宮頸がん患者における優先度

外来診療における優先度
高優先度

  • 不安定な状態 (急に出現する腹痛、術後合併症、骨盤放射線治療中・治療後の合併症、尿路閉塞)
  • 症候性の持続する性器出血(骨盤・腟の潰瘍性腫瘍による) 
  • 子宮頸がんの診断が確定した後の無尿や症候性DVT
  • 新たに組織学的にがんと診断された患者で、手術前に自宅近くで進行期診断のために血液検査や画像検査を行う

中優先度

  • 合併症のない術後患者
  • 新しい問題または症状のある既往患者:できるだけ電話診療へ変更
  • 進行再発例で(緩和)治療後の定期通院は2ヶ月までの延期

低優先度

  • 早期症例で根治治療後の定期通院は6ヶ月までの延期
  • 臨床研究以外の経過観察

画像検査 (CT/USG) の優先度
高優先度

  • 腸穿孔や腹膜炎
  • 術後合併症:穿孔、縫合不全
  • 尿管狭窄、水腎症
  • 神経根・脊椎浸潤が疑われる神経症状
  • もし行われていない場合の、進行期診断のための検査

中優先度

  • 早期子宮頸がん根治治療後の再発が疑われる時の腫瘍評価 
  • 進行再発例で(緩和)治療後の定期通院は2ヶ月までの延期
  • 臨床研究での経過観察 

低優先度

  • 臨床試験以外の経過観察のための受診 (可能であれば自宅近くでの血液検査や画像診断を行い、電話診療に変更)

臨床試験中の患者に関しては、個々の試験の管理方針 (治療頻度、血液検査、画像検査) について確認する。

外科手術の優先度
高優先度

  • 画像診断で診断確認された腸穿孔、腹膜炎
  • 骨盤内再発に対する放射線治療中・治療後の合併症: 瘻孔や腸穿孔
  • 術後急性期合併症: 腸穿孔や尿管損傷

中優先度

  • ステージⅠA2、ⅠB1-ⅡA期に対する広汎性子宮全摘術±両側付属器切除+リンパ節郭清
  • ステージⅠA期に対する広汎子宮頚部摘出術±センチネルリンパ節生検は2ヶ月の延期

低優先度

  • 無症候性の瘻孔修復術
  • CIN3の円錐切除術 (適切な場合)
  • Slow growthの骨盤内局所正中再発切除手術
  • 骨盤内臓全摘術はCOVID19流行が終わってから実施するよう延期を考慮する

腫瘍内科学的治療の優先度
高優先度

  • 臨床試験治療中は継続する
  • ステージⅠB3、ⅡA-ⅣA期に対する化学療法併用放射線治療 (CRT)
  • ステージⅣBに対する初回治療、CRT後12ヶ月以上経過しての初回局所再発に対して、cisplatin + paclitaxel + bevacizumab併用療法を行う (禁忌ではない場合)。cisplatinが禁忌の場合は、carboplatin+paclitaxelもしくはtopotecan+paclitaxel +bevacizumab併用療法を考慮する。

中優先度

  • 重大なベネフィットが確認されている症例での標準治療としての化学療法の継続

低優先度

  • セカンドラインの化学療法:臨床的必要性があり、患者希望があり、医療資源が入手できる場合

2018FIGO分類
免疫チェックポイント阻害剤に関しては、臨床試験においてのみ使用される

放射線治療の優先度
高優先度

  • ステージⅠB3、ⅡB-ⅣA期に対するCRTにおける骨盤体外照射
  • 脊髄圧迫や脳転移、その他の重大な転移病変

中優先度

  • 症候性の局所再発 (骨盤局所正中再発や後腹膜リンパ節転移) に対する放射線治療

低優先度

  • 手術ができない無症候性再発に対する緩和照射

略語:
BSO, bilateral salpingo-oophorectomy; CRT, chemoradiotherapy; CT, computed tomography; DVT, deep vein thrombosis; EBRT, external beam radiotherapy; SLN, sentinel lymph node; US, ultrasound.

和訳:阿部彰子
校正:西村正人


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て ESMO MANAGEMENT AND TREATMENT ADAPTED RECOMMENDATIONS IN THE COVID-19 ERA: ENDOMETRIAL CANCERを和訳しました。
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子宮体がん患者における優先度

外来診療における優先度
高優先度

  • 不安定な状態 (急に出現する腹痛、術後合併症、骨盤放射線治療中・治療後の合併症)
  • 症候性の持続する性器出血 (初発時も再発時も含む)
  • 子宮体がんの診断が確定した後の無尿や症候性DVT・肺塞栓

中優先度

  • 閉経後出血に対する超音波や子宮鏡検査
  • 維持療法を必要とする合併症のない術後の患者
  • 治療中の新しい問題や症状を認める患者:できるだけ電話診療へ変更
  • 臨床試験中の定期受診

低優先度

  • 異型内膜増殖症やEINの妊孕性温存治療
  • 再発高リスク症例の一次治療後の定期通院(症状がなければ最大6ヶ月までの延期)
  • 再発中リスク患者の定期通院は電話診療へ変更
  • 無症候性のSLOW growthの腟や正中再発

画像検査 (CT/USG) の優先度
高優先度

  • 腸穿孔や腹膜炎
  • 術後合併症:穿孔、縫合不全、肺塞栓、膿瘍、出血
  • 水腎症のある尿管狭窄
  • 進行期診断のためのCT検査

中優先度

  • 根治治療後の再発が疑われる時の検査 
  • 進行再発例で緩和治療後の定期通院は最大2ヶ月までの延期
  • 臨床研究での経過観察 
  • 再発低リスク子宮体がんに対する妊孕性温存治療中の経過観察

低優先度

  • 臨床試験以外の経過観察のための受診 (可能であれば自宅近くでの血液検査や画像診断を行い、電話診療に変更)

臨床試験中の患者に関しては、個々の試験の管理方針 (治療頻度、血液検査、画像検査) について確認する。

外科手術の優先度
高優先度

  • 性器出血
  • 画像診断で診断確認された腹膜炎
  • 骨盤内再発に対する放射線治療中・治療後の合併症: 瘻孔や腸穿孔
  • 術後急性期合併症: 腸穿孔や尿管損傷、出血

中優先度

  • 新たに診断された子宮に限局している子宮体がんに対する子宮全摘術±両側付属器切除+リンパ節郭清

低優先度

  • 遺伝性腫瘍に関わる子宮体がんのリスク低減手術
  • ホルモン治療無効の異型内膜増殖症やEINに対する手術
  • 無症候性の瘻孔修復術
  • Slow growthの骨盤内局所正中再発に対する切除術

腫瘍内科学的治療の優先度
高優先度

  • 症状のある転移再発に対して、未治療でホルモン感受性のない症例での化学療法
  • 臨床試験治療中は継続する
  • 再発高リスク症例の術後治療としての化学療法±放射線治療

中優先度

  • ホルモン感受性の可能性のあるSlow growthの転移再発症例 (grade1-2、ホルモンレセプター陽性)

低優先度

  • ホルモン療法に適さない患者でのセカンドラインの化学療法

放射線治療の優先度
高優先度

  • 再発高リスク症例での術後体外照射±化学療法
  • 手術不能な症状のある初回腫瘍に対する放射線治療

中優先度

  • 再発中リスク症例での腔内照射
  • 術後の孤立性腟再発に対する放射線治療

低優先度

  • 症状のない腟・骨盤再発に対する緩和照射

略語:
AH, atypical hyperplasia; BSO, bilateral salpingo-oophorectomy; ChT, chemotherapy; CT, computed tomography; DVT, deep vein thrombosis; EBRT, external beam radiotherapy; EIN, endometrial intraepithelial neoplasia; HT, hormone therapy; SLN, sentinel lymph node; US, ultrasound

和訳:阿部彰子
校正:西村正人


日本臨床腫瘍学会は、ESMOの許可を得て PALLIATIVE CARE PRIORITISATION DURING THE COVID-19 CRISISを和訳しました。 (https://www.esmo.org/guidelines/cancer-patient-management-during-the-covid-19-pandemic/palliative-care-in-the-covid-19-era外部サイトへ移動
Publication date: April 2020. 出版日:2020年8月
© European Society for Medical Oncology. All rights reserved. 著作権:ESMOが所有

基本原則

  • がん患者のケアにおいては、重度の苦痛の緩和することと、重症の急性期合併症を管理することを継続的に優先する必要がある。
  • 症状コントロールに関する多くのことは、電話相談で対応可能である。
  • 緩和ケアの必要性が高いと予想される患者に対しては、可能な限り在宅ケアサービスを手配するべきである。

優先順位

がんの診療においては、以下のような重篤な合併症に対する緊急の診断や治療を継続して行うべきである。

  • 脊髄圧迫
  • 切迫した骨折と病的骨折
  • 消化管閉塞:上部、下部、胆道
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 急性閉塞性(腎後性)腎不全
  • 重度の呼吸困難
  • 血栓症と肺塞栓
  • 重度の貧血
  • 重度の血小板減少症
  • 滲出液貯留:症候性胸水貯留、心タンポナーデ、緊満する腹水貯留
  • 上大静脈閉塞
  • 脳転移;特に発作、部分的神経学的欠失、認知機能障害を合併している場合
  • せん妄
  • 在宅管理では十分にコントロールできない痛みやその他の重篤な症状
  • 在宅管理では十分にコントロールできない終末期の重度の難治性症状

治療のための実践的な提案

  • 患者の症状管理のために鎮痛剤や他の薬が必要な場合は、十分な供給を確保する。
  • 遠隔医療を利用して、高介護度の患者を積極的に監視する(これは看護チームに委任することができる)
  • 骨転移や脊髄圧迫に対して緩和的放射線治療が必要な場合は、(臨床的に妥当であれば)単回照射を行うべきである。
  • 非常に進行したがん患者さんにおいては、可能な限り在宅での管理を行う。
  • 胸水または腹水を頻回にドレナージする必要のある患者に対しては、永久留置型カテーテルドレナージシステム(PleurXなど)を使用すべきである。

高優先度

  • 脊髄圧迫を示唆する症状:背中や首の増強する痛みや放散痛。緊急に画像検査による評価が必要であり、場合によっては放射線治療や手術が必要である。 可能であれば、単回放射線照射を考慮する。
  • 骨折の切迫を示唆する症状:立っているときや歩いているときに股関節や脚に激しい痛みがある。外科的処置ができない場合には、少なくとも単回の放射線照射を行う。
  • あらゆる原因による重度の疼痛(7~10/10)、在宅管理では十分にコントロールできないもの
  • 重度の呼吸困難の増加(7~10/10):既知の広範な肺転移がある場合を除き、緊急の治療が必要な胸水貯留または肺塞栓症である可能性がある。胸水貯留を繰り返している患者には在宅ケアのためにPleurXドレーンシステムを検討する。
  • 上部消化管の閉塞症状:嘔吐を伴う腹部膨満感
  • 下部消化管の閉塞症状:痛みを伴う腹部膨満感や完全な便秘
  • 他の原因による重度の吐き気・嘔吐
  • 上大静脈圧迫を示唆する症状:顔や腕の腫れ
  • 脳転移を示唆する症状:発作、精神錯乱を伴う頭痛、または限局性神経学的異常
  • 大出血:吐血、喀血、直腸出血
  • 貧血 Hb <7 g/dL(末期ではない)、症状のある貧血 (Hb 7-8 g/dL)
  • 胆道閉塞の症状:新規発症黄疸、褐色尿、発熱
  • 深部静脈血栓症の症状:脚や腕の腫大や疼痛
  • 新規発症した過活動型せん妄
  • 強い自殺企図を伴う重度の精神的苦悩
  • PSが良好な症候性脳転移。放射線治療を検討(ステロイドの必要性を最小限に抑えるため)。

中優先度

  • 中等度の腰背部痛(ESAS4-6)
  • コントロールが不十分でレスキューを頻回に投与している腰背部痛
  • 広範囲な肺転移を有する症例の重度の呼吸困難:電話の連絡先を知らせる。在宅ケアサービスで十分対応できなければ入院を検討する。
  • 食後の嘔吐:消化管の検査と画像診断を試みる。ステントや胃管の留置が必要な場合がある。
  • Hb 7-8 g/dL であるが症状が無い
  • 不安の増大や抑うつ
  • 無症候性の脳転移。モニタリングを行う。治療を遅らせることができる。

低優先度

  • 軽度の腰背部痛
  • 軽度から中等度の局所的な骨痛
  • 軽度で安定した呼吸困難
  • 時折の嘔吐
  • 便秘
  • 痰に少量の血液が混じる、トイレットペーパーに血液が付着する
  • 終末期のHb <7 g/dLまたはHb >8 g/dL
  • 広範な肝転移を認める患者に発症した黄疸
  • 軽度の腕または両側下肢の腫大
  • 広範な脳転移、肝転移、進行性腎不全を伴う患者に発症した進行性の精神錯乱
  • 軽度から中等度の不安や抑うつ
  • PS不良または終末期の症候性脳転移。デキサメサゾン16㎎/日の投与を検討する。

略語:
COVID-19, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2-related disease; ESAS, Edmonton Symptom Assessment Scale; Hb, haemoglobin; PS, performance status.

和訳:古川孝広
校正:高山哲治
2020年8月2日 (8月13日改訂)