医学生・研修医のための腫瘍内科セミナー

■医学生・研修医のための
腫瘍内科セミナー(MOS2025 in Summer)報告

セミナー報告 Dグループ

京都大学腫瘍内科 専攻医の辻村拓也と申します。
このたび、腫瘍内科セミナーにDグループの一員として参加させていただきました。私はこれまで日程の都合により当セミナーへの参加の機会に恵まれませんでしたが、今回ようやく念願叶って参加することができました。すでに腫瘍内科の道を歩み始めた専攻医として、少しでも多くの医学生や初期研修医の皆様に腫瘍内科の魅力をお伝えすることを目標に、2日間のプログラムに臨みました。
 本セミナーでは、グループワークでのケーススタディを中心に、パネルディスカッションやがん体験者による語りなど、極めて濃密なプログラムが用意されており、非常に充実した学びの時間となりました。

セミナー報告 Dグループ1
セミナー報告 Dグループ2

パネルディスカッションでは、厚生労働省、女性医師、市中病院、アカデミア、在宅診療を行う開業医など、さまざまな立場から登壇された先生方が、それぞれのキャリアについて率直に語ってくださり、自身の将来像を多角的に考える貴重な機会となりました。とりわけ私にとって印象深かったのは、市中病院のパネリストとして、天理よろづ相談所病院 腫瘍内科部長の古武剛先生がご登壇されたことです。古武先生は、私が初期研修1年目で腫瘍内科を志すきっかけを与えてくださった恩師であり、腫瘍内科を病院内に立ち上げていく過程を間近で拝見しておりました。今回、「市中病院における腫瘍内科のキャリア」をテーマに、立ち上げ期のご苦労や現在に至るまでの実践を共有いただきました。質疑応答でも多くの関心が寄せられており、市中病院という選択肢の意義が確実に届いていることを感じることができ、深い感銘を受けました。

メインとなるグループワークでは、私は書記として議論の整理に努め、進行役は筑波大学医学部6年の三瓶直人先生が務めてくださいました。私たちのチームは、滋賀県の名産である「日野菜」にちなんで、「日野菜和夫さん(70歳男性)」という架空の肺癌患者を設定し、ステージⅣで骨転移を有し、Pembrolizumab投与中にirAEによる肺障害を発症したことで、最終的にBSCに至るまでのPatient Journeyをチーム一丸となって創造しました。

 限られた時間の中ではありましたが、単に病期や治療方針の検討にとどまらず、患者の解釈モデルや家族関係、社会的背景にまで丁寧に目を向け、多角的な視点からの検討を行うことができました。治療選択においても、医学生が自らガイドラインを参照し、Performance Status、ドライバー遺伝子変異、PD-L1(TPS)などの情報を踏まえた上で適切なレジメンを選択しており、その姿勢に大いに感銘を受けました。

また、irAE発症後の免疫療法再導入に関する意思決定については、ロールプレイ形式で模擬インフォームド・コンセントを行いました。発表時には、東海大学医学部4年の井上輝海先生が病状説明をご担当くださり、事前練習の成果もあり、非常に平易かつ堂々とした発表を披露され、聴講者一同、大きな学びを得ることができました。

 我々のグループは、賞を目指していたわけではありませんが、少人数ながらも和やかで真摯な議論を重ねた結果として、最優秀賞を頂くことができました。この成果は、メンバーの熱意とチームワーク、そして東北大学腫瘍内科 川上教授、国立がん研究センター 山中太郎先生をはじめとする指導医の先生方のご指導の賜物であり、心より感謝申し上げます。閉会後には、メンバー全員で記念撮影を行い、たった1泊2日とは思えないほど濃密な時間を共有し、かけがえのない絆が築けたと実感しております。

セミナー報告 Dグループ3

 また、1日目夜の懇親会では、専門医部会長である高野利実先生をはじめ、国立がん研究センターで活躍される臨床医や医系技官、さらには在宅医療を専門とされる開業医の先生方とざっくばらんにお話しする機会があり、普段接することの少ない腫瘍内科の側面について学ぶことができ、非常に貴重な経験となりました。

 今回のセミナーが、腫瘍内科という領域に少しでも興味を持っていただく契機となっていれば、一足先にこの道に進んだ者として、これほど嬉しいことはありません。今後、高齢化が進み、2人に1人ががんになるとされる時代においては、どの診療科を志すにせよ、がん診療とは切っても切り離せないものと考えております。だからこそ、これから一人でも多くの医学生・研修医の皆様に、腫瘍内科の魅力に気づいていただけるよう、私自身も日々の臨床業務や学会活動を通じて、末端ながら腫瘍内科のPRに尽力してまいりたい所存です。もし少しでも関心をお持ちいただけた方がいらっしゃいましたら、学年を問わず、ぜひこうしたセミナー等の機会に積極的に参加してみてください。きっと、新たな視点や刺激が得られるはずです。

 Dグループの皆様、そして全参加者の皆様が、将来どの専門領域を選ばれるにせよ、それぞれのフィールドで存分にご活躍されることを、心よりお祈り申し上げます。そしてまた、どこかで再会できる日を楽しみにしております。

 最後になりましたが、今回の素晴らしいセミナーを企画・運営してくださった関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。

京都大学腫瘍内科 専攻医
辻村 拓也


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