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理事長レター Vol.2「学術集会について」
神戸大学の南博信教授を学術集会長として開催される第14回日本臨床腫瘍学会学術集会 開催まで残り僅かとなってきました。学術集会での発表の準備に忙しい会員の皆様も多いことと想像いたしますが、今回の学術集会も素晴らしいものになると確信しております。
前回、第1回目の理事長レターでは、専門医制度についてお話ししましたが、その後の専門医制度に関する混乱は皆さまご承知の通りで、残念ながら先が見通せない状況となっています。第2回目の理事長レターでは、今年から3年連続で神戸にて開催される学術集会についてお話ししたいと思います。
学術集会の同一会場での連続開催について、いろいろなご意見のあることはよく承知していますが、連続開催の大きなメリットはコスト削減と安定した会場確保です。
日本臨床腫瘍学会は2002年に任意団体として設立されNPO法人を経て、2015年6月1日より公益社団法人日本臨床腫瘍学会として活動しています。公益社団法人としてより公益性の高い活動が求められていますが、財政的には不安定な寄附に依存していることは否めません。幸いこれまで赤字決算となったことはありませんが、無駄を省いた学術集会を含む学会運営が求められます。連続開催によるコスト削減はその方策の一つとご理解下さい。
日本臨床腫瘍学会の活動はビジョン&ミッションに基づいて行われていますが、学術集会以外にも専門医の育成・認定、教育セミナー、市民公開講座など公益性の高い様々な活動を行っています。日本の多くの学会では専門医制度が収入基盤になっていますが、日本臨床腫瘍学会では逆に専門医制度のために学会からの相当額の持ち出しがあります。これは専門医取得のために非常に厳しい要件が設定され、年間に認定される専門医が100名前後に留まっているにも関わらず、複数の面接官による面接試験の実施や筆記試験の質を確保するために多額の経費が掛かっているからです。これらの経費は質の高い専門医制度を維持するために必要なものと考え今後も削減する予定はありません。
連続開催によるコスト削減分で参加費値下げを求める声もあるかもしれませんが、これらの財源は、世界に通用する次世代のリーダーを育成することに活用したいと思っています。日本臨床腫瘍学会は国際化を進めており、目指すのはASCO、ESMOと肩を並べるアジアの中核学会になることです。近畿大学の中川和彦教授が学術集会長をされた第10回学術集会(2012年大阪)より海外からの一般演題を募集、一般演題の約10%は海外からの演題となっています。しかし、ASCO、ESMOと肩をならべるには程遠いのも現実です。また、我々世代の責任でもありますが、グローバル企業などが実施する国際共同試験で日本がリーダーシップを取れているかというと、これも十分ではありません。日本の臨床試験の質、登録症例数を考えるともっと貢献して良いはずです。この原因のひとつは英語での討論にハンディがあるということであり、国際的に通用する次世代のリーダーを学会として育成することが必要と考えています。現在、ASCOなどと協力して、世界に通用する次世代のリーダーを育成するプログラムを検討しています。誰にこのようなプログラムに参加してもらうかは公正に判断しなければなりませんが、学会としても日本にとっても非常に重要なプロジェクトと認識しています。
連続開催の第二のメリットは、安定した会場確保にあります。2020年東京オリンピックの影響もあり、主要な学会場の確保が困難な状況になっています。数年先まで会場を確保できることは大きなメリットです。
では、なぜ神戸か? 当初、会場の固定化は2017年の学術集会から3年間の予定でした。2016年の学術集会は神戸大学の南博信教授が学術集会長に決まった段階で、神戸開催に決まっていました。3年連続の開催地を決定するコンペの結果、神戸が選ばれましたが、2016年の神戸開催がすでに決定していたために、2016年から2018年までの3年間を神戸で開催することになりました。
神戸が選ばれた理由は会場費が比較的安く、3年連続開催による費用的なメリットが大きかったこともありますが、一番大きな理由は会場のレイアウトです。日本臨床腫瘍学会の学術集会には5,000名以上の参加者があります。メイン会場として1,500名以上入れるような会場も重要ですが、数百名程度が入れる会場を多く確保することが最も必要になります。過去の学術集会でも200名程度の会場が参加者で溢れる光景を何度も目にしています。たしかに神戸の会場は決して新しく綺麗だとは言えませんが、数百名規模の会場が他の会場よりも多く確保できるメリットがありました。
このような理由で神戸が選ばれましたが、今回の会場固定化はあくまで3年間の試行です。今後の開催地をどうするかは様々なご意見を参考に、諸状況を見極めて慎重に判断したいと考えています。
恐らく梅雨も明け、夏真っ盛りの神戸ですが、一人でも多くの会員の皆様と神戸でお会いできることを楽しみにしています。是非、神戸へお越しください。
2016年7月4日
日本臨床腫瘍学会
理事長
大江裕一郎