ごあいさつ
近年の医療技術の進歩に伴いがん治療は個々の医師の裁量によるものから多診療科・多職種によるチーム医療へと変化しています。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医、歯科・口腔外科医、放射線科医、腫瘍内科医、看護師、薬剤師などがそれぞれの専門性を発揮して協力することにより、がん患者さんに最良の医療を提供することができます。
これまで頭頸部がんに対しては有効な薬物療法がない中で、主に耳鼻咽喉科・頭頸部外科医や歯科・口腔外科医により治療が実施されてきました。しかし、頭頸部がんに対しても有効な分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が複数開発されるようになりました。有効性も期待できる一方で特徴的な毒性を有する抗悪性腫瘍薬を有効に使いこなすには診療科の枠を超えたチーム医療が必要となっています。このような背景から、日本頭頸部外科学会及び日本口腔外科学会と日本臨床腫瘍学会では学会間の診療連携協力を推進することといたしました。
この連携プログラムは耳鼻咽喉科・頭頸部外科医や歯科・口腔外科医と腫瘍内科医が協力して頭頸部がんの患者さんを診療するのみではなく、お互いの知識を高め合う教育面での連携も取り入れています。このような学会間の連携が、日本のがん診療におけるチーム医療に寄与するものと大いに期待しています。
- 日本臨床腫瘍学会
- 理事長 南 博信
本連携プログラム作成に至った経緯
日本における頭頸部がんの年間罹患数は約2万人、死亡数は約8000人であり男性に多いことが知られています。頭頸部がんに対する治療は、外科治療、放射線治療、がん薬物療法などを病態に応じて組み合わせて行います。転移・再発頭頸部がんは一般に予後不良で、特にプラチナ系抗がん薬に抵抗性となった場合の予後は非常に悪く、新たな有効な治療法が望まれてきました。国際共同第III相試験の結果を基に、免疫チェックポイント分子であるPD-1受容体に対する抗体薬であるニボルマブの頭頸部がんに対する適応追加が承認されました。2017年3月現在、ニボルマブは「再発又は転移を有する頭頸部癌」、に対する適応にて承認されています。
日本における頭頸部がん診療は耳鼻咽喉科・頭頸部外科医、歯科・口腔外科医を中心に担われてきました。しかし、このような有効性も期待できる一方で特徴的な毒性を有する抗悪性腫瘍薬の適正使用と有害事象のマネージメントのためには、がん薬物療法専門医との連携が必要と考えられます。そこで、頭頸部がんにおける薬物療法の適正使用と治療成績の向上を目指して、日本頭頸部外科学会及び日本口腔外科学会と日本臨床腫瘍学会では学会間の診療連携協力を推進することといたしました。