- 会員の皆さまへ
理事長レター Vol.22 新年のご挨拶
新年、明けましておめでとうございます。今年もがん医療をとりまく環境の変化は続くと思いますが、日本臨床腫瘍学会は適切に対応してまいります。引き続き会員の皆様にはご支援を賜りたくお願い申し上げます。
COVID-19蔓延下では社会活動が困難を極め、学会活動のあり方も変わりました。教育セミナー、Best of ASCOやBest of ESMOなど各種セミナーがWebベースとなりました。
このスタイルは今後も続くものと思われます。Webベースとなったことで参加しやすくなりましたが、一方通行となってしまいやすく突っ込んだ議論がしにくくなったことも事実です。それぞれのセミナーを担当する部会では深い議論がしやすいような配慮をしています。特にBest of ESMOの契約は今までは第三者が入っていましたが、今年からは日本臨床腫瘍学会とESMOが直接契約をすることにしました。これにより本学会としてやりやすい形となり、ますます面白いものとなるものと期待しています。会員の皆様には、今年の各種セミナーも積極的に参加し、最新の情報に触れていただきたいと思います。
がん医療の均てん化が叫ばれてい久しいですが、そのためには、特定の臓器・領域のがんしか診療できないmedical oncologistではなく、幅広いがん種を診療するgeneral oncologistが重要な役割を果たします。これからがん薬物療法を修得する若い医師にはぜひ幅広いがん種のトレーニングを積んでいただきたいと思います。多くのがん種で使用されるようになった免疫テェックポイント阻害薬の副作用管理や、がん種横断的に治療を考える必要があるがんゲノム医療は、幅広いがん種に対応できるmedical oncologistの活躍の場であります。造血器腫瘍を学んでおくことは固形がんの治療にも役立ちます。臓器横断的なトレーニングを積み、その上で必要であれば各臓器がんの専門性を持って欲しいと思います。がん医療の均てん化のためには、特定の臓器・領域のがんしか診療できないmedical oncologistではなく、一般的ながん種の多くに対応できる真のmedical oncologistが必要です。日本の津々浦々にgeneral oncologyを普及させなければなりません。まだまだ我が国ではgeneral oncologyを実践できる人は多くありません。若い人には、ぜひgeneral oncologyを学んでいただきたいと思います。
がん医療の均てん化を推進する一方で、希少がんなどがん種や病態によっては均てん化ではなく集約化しないと、適切な医療ができない場合もあります。すべてを均てん化するのではなく、均てん化すべきがん医療と集約化すべきがん医療を分ける議論が進むものと思われます。どのようながん医療を均てん化すべきで、どのようながん医療を集約化すべきか、皆様のご意見をお寄せいただきたいと思います。
過去の不適切な臨床試験を教訓に臨床研究法が施行されました。そこでは臨床研究における医薬品等の使用方法が薬事承認済みの用法等と少しでも異なる場合は、適応外使用となり一律に特定臨床研究に該当してしまいます。特定臨床研究の煩雑さによる臨床試験の停滞を避けるため、臨床研究法が改正されようとしています。これにより、医薬品等の適応外使用について、薬事承認済みの用法等とリスクが同程度以下の場合には臨床研究法の特定臨床研究から除外することが見込まれています。臨床研究の円滑な実施が期待できるようになり、とくにがんや小児領域で効果的な運用が望まれます。どのような場合に対象となるのか学会としてもガイドライン等を通じて明らかにしていく必要があります。このような活動にも会員の皆様のご協力をお願いしたいと思います。
このように、今年も日本臨床腫瘍学会は様々な事業活動を行ってまいります。これらの活動は会員の皆様のボランティア活動で成り立っています。学会の委員会活動やセミナー等での講師など会員の皆様のボランティア活動で支えられています。このようなボランティア活動は日本臨床腫瘍学会、ひいては日本のがん医療の向上につながるものです。何卒、ご協力をお願いします。日本臨床学会は会員の皆様の貢献に報いる制度を構築し、学会として会員の皆様に何ができるかを考えてまいります。会員の皆様も学会に何ができるかを考えていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
2025年1月1日
公益社団法人 日本臨床腫瘍学会
理事長 南 博信