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理事長挨拶


2017年9月1日
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 南 博信

この度、日本臨床腫瘍学会理事長を拝命致しました。日本臨床腫瘍学会は研究会発足から24年、学会となってから15年が経過し、この間に会員数も9000名を超える大きな学会となりました。大きくなったばかりでなく最も活発に活動している学会の一つです。その学会の理事長を拝命し、また、がん医療、学会を取り巻く環境を考えたとき、責任の重さに身が引き締まる思いです。

1.専門医制度
 日本臨床腫瘍学会は発足当初からメディカルオンコロジストの育成に力を入れており、がん薬物療法はどうあるべきかという理想を見据えて専門医制度を構築してきました。まず研修カリキュラムを制定、認定研修施設を指定、教育セミナーを実施し、教育を行った後で初回より平等な試験を行い専門医として認定してきました。そのような中で、腫瘍学が内科学会および内科関連13学会協議会で内科の一部門として承認され、サブスペシャルティとして認知されました。しかし内科だけに目を向けるのではなく、外科系診療科出身でも真剣にがん薬物療法に取り組んでいる医師にも活躍してもらえる場を提供する必要があります。今後は新専門医制度の中で当学会の専門医制度を盤石なものとしていきたいと思います。

2.臓器横断的視野と専門性
 がん薬物療法専門医は認知されるようになりましたが、日本のがん医療はどうあるべきか、その理想を考えると、まだまだ改善の余地があります。日本のがん薬物療法は臓器・領域別に行われてきました。しかし、がん薬物療法の考え方はすべてのがんで共通です。分子標的薬を含め抗悪性腫瘍薬は、がん種を超えて有効性を示すことが多く、その副作用管理も総合的な全身管理能力を必要とします。そのため、がん薬物療法を安全かつ有効に行うためには臓器横断的視野が必須といえます。日本臨床腫瘍学会は臓器別がんに関する学会の集合体ではありません。臓器横断的視野に立って各領域のがんの知見を有機的に結合し相乗効果を生まなければなりません。この臓器横断的なコンセプトで開催された2016年、2017年の学術集会は過去最高の参加者を得て、この方向性が支持されていると言えます。
 もちろん、がん専門病院や大学などのアカデミアでは、研究も診療も専門性を持つ必要があります。持たなければ世界に通用しません。しかし、メディカルオンコロジーのトレーニングは臓器横断的に行い、これを理解した上で専門性を高めるのが合理的です。臓器横断的にトレーニングしていることで、市中の病院に転出した際には、専門性にこだわらず各施設のニーズに応じて柔軟に各がんの治療に対応できます。これにより、従来の日本のがん医療の欠点の一部を克服できます。

3.国際化の推進と学術集会
 日本臨床腫瘍学会の国際化もさらに推進したいと思います。これまでの学術集会関係者および学会員のご理解とご協力により、アジアからも日本臨床腫瘍学会学術集会への一般参加者が増えています。今後は、アジアの医師・研究者を対象とした企画も計画し、各国のがん関連団体との連携を深化することでアジアの中での日本臨床腫瘍学会の位置を確立するための活動を推進したいと思います。
 学術集会のありかたも再検討する時期に来ていると考えています。これまではメディカルオンコロジストの育成や臨床試験の推進を目的とした教育的な内容が中心でしたが、それに加えて学術的内容を充実させ重要な研究成果を日本臨床腫瘍学会から世界へ発信していく必要があります。米国臨床腫瘍学会(ASCO)や欧州臨床腫瘍学会(ESMO)など海外学会で発表されたデータの再発表、サブセット解析や長期Follow upデータの発表ではなく、実地診療を変えるような良いデータが最初に日本臨床腫瘍学会学術集会で発表されるようになる必要があります。そのためには、学術集会の開催時期の変更も視野にいれて検討する必要があると考えています。日本から良いデータを発表するようになれば、アジアからも本学会学術集会で発表してもらえるようになることが期待できます。そのために良い研究を支援する取り組みも必要です。

4.若い力
 メディカルオンコロジーを目指す若い医師を増やすことにも力を入れたいと思います。医学生や若手医師に学会として働きかけ、がん医療の面白さを伝えメディカルオンコロジーに進む若手医師を増やしたいと思います。

5.透明性
 がん医療の進歩は新しい抗がん薬の開発なしでは考えられず、したがって製薬企業との連携は重要です。しかし、癒着などを疑われるような行為は避けなければなりません。その上でお互いwin-winの関係を構築する必要があります。そのためにも学会のガバナンスの機能を充実させる必要があると考えています。学術団体がすべきことと製薬企業がすることを明確に区別し、学術集会や教育事業などでは大いに協力し、ガイドライン作成などでは独立性を確保すべきと考えます。

6.最後に
 学会員の皆様のおかげで、これまで日本臨床腫瘍学会は順調に発展してきました。その発展をさらに加速させたいと思います。しかし、日本臨床腫瘍学会は会員のためだけにあるのではありません。我々の視野の先には常にがん患者さんがいなければなりません。そのために日本臨床腫瘍学会はどうあるべきか、その理念・理想を見失わず、日本のがん医療をよくすべく、皆様と一緒に努力して参りたいと思います。